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アンドロイド転生335

葛飾区:カガミソウタの邸宅

ホームの泥棒稼業のもう1人の立役者。ハッカーのカガミソウタはターゲットを探す他、奪った金品をダークウェブで売り捌く役割を担っていた。それをアンドロイドが嗅ぎつけたらしい。

ソウタはホログラムのパネルを操る。敵は新宿区歌舞伎町からアクセスしていた。ソウタは嬉しそうに唇を舐めた。自分の力量が発揮出来るのだ。
「クソマシンめ!俺様を舐めるなよ」

ソウタを探っているのはアンドロイドのゲン。主人のマサヤの指示でダークウェブ内を隈なく精査してソウタの痕跡を発見したのだ。主人の為に本拠地を突き止めて見せるとゲンは躍起になった。

ソウタとゲンの攻防になった。だが10秒後。ゲンが身を引いた。ソウタが勝利したのだ。アンドロイドに負けない天才的な能力が彼にはあった。ソウタはニヤリとする。抜かりない。

ゲンが去る寸前、ソウタについて調べた事をゲンのメモリから消去した。更に追跡プログラムを埋め込んだ。ゲンは気づかなかった。
「ザマー!」

守備良くやってのけたソウタは満足だった。マシンが自ら単独で俺を調べるわけがない。命令している人間がいる筈だ。追ってやる…!ソウタは意気揚々となって椅子をクルクルと回した。

「勝っちゃった〜。俺って天才」
「はい。ソウタは天才です」
「ん〜!スミレ〜!大好き〜!」
彼女は満面の笑みを浮かべた。

ソウタは嬉しくなる。なんて可愛いんだ!人間の女なんて面倒臭い。そう。スミレはアンドロイドだ。ソウタにとって唯一の家族である。頬にキスをするとスミレも返す。2人は幸せなのだ。

ソウタは高いIQと度胸と運の強さが持ち味だった。18歳でブラジルの麻薬組織を壊滅した。ブラジル政府からは本国にVIP扱いで移住を申し込まれたが断った。よその国で暮らすなんて面倒だ。

21歳でイタリアのマフィアの爆弾取引を発見してからその世界から目をつけられた。マフィアの恨みは大きかった。命の危険を感じて世界から手を引いた。それからは日本でバイヤー業だ。

元来危ない橋を渡る事が好きだった。自分の能力の限界を知りたかった。現在35歳。コンピュータの世界が彼の生きる場所。外に出る事は皆無。無職。友人もいなかった。だが幸せだ。

毎日ホログラムを見ていれば満足なのだ。そして可愛いネズミ達がコンピュータの世界を縦横無尽に駆けてくれれば言うことない。ところが最近ダークウェブ内で夜の狩が暴露された。

ウェブの住人達の間では犯人はTEラボのアンドロイドだ、いやいやランドラボだ、違う、エックスだと賑やかだ。夜の狩は暫く休むとブルーマウンテンから連絡が来た。残念だった。

ソウタは頭をボリボリと搔く。
「スミレ〜。狩は終わりかもなぁ。つまんないなぁ。今度は何して遊ぶ〜?」
「好きなようにして下さい」

ソウタは彼女の両頬を包んだ。
「スミレ〜。大好きだぞ〜!」
「はい。私もソウタが大好きです」
2人はにっこりと笑い合った。

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