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アンドロイド転生401

中国福建省:ワン・イーチェンの邸宅

真夜中の11時過ぎ。イヴはプランAを実行するべく、中国マフィアのワン兄弟に爆弾取引を持ち掛けた。売り手は製品の質が良いイタリアだ。不服そうだったイーチェンが漸く興味を示した。

イヴは残念そうな顔をした。
『良いお返事を下さらないとアメリカのファミリーと取引をすると言っています』
早く話をつける為、競争相手がいると偽って2人を煽った。まんまとイヴの作戦に乗った。

ハオランは立ち上がった。
「兄貴!アメリカになんぞ負けてたまるか!うちが先に買おうぜ!」
イーチェンが顎をさすった。
「その前にブツの詳細を教えろ」

イヴは少しだけイーチェンを見直した。気性の荒いだけの男ではないらしい。冷静な判断力もあるようだ。それだからこそ、中国最大勢力のトップを張っていられるのかもしれない。

イヴは微笑んで、商品の量、グレード、価格、納入期日を伝えた。同時にソウタと連絡を取り詳細を決めた。ソウタはイタリアのジョゼフ・ルチアーノと交渉中である。プランAは必ずうまくいく。

兄のイーチェンは軽く頷いた。
「悪くねぇな」
イーチェンが1分だけ話を聞くと言ってから約束の時間をとうに過ぎたが彼は忘れたようだ。

良い傾向だ。イヴは満足だった。だがもう一押し。ワン兄弟の目前にスオウ組のトップ、スオウトシキの立体画像が浮いた。イヴの能力ならばフェイク動画を作りだす事も可能だった。

最後はトップ同士で話をさせる。イヴの作戦だった。スオウの画像が2人を見下ろした。
『ワン兄弟よ。こんな時間にすまんな。時は金なりという日本の諺を知っているかな』

弟のハオランが宙を見上げてニヤリとした。
「中国にも似たような諺はあるぜ。タイムズマネーってやつだな。よう!スオウさんよ!面白え話じゃねぇか。俺は楽しくなってきたぜ。

フェイクのスオウは頷いた。
『イタリアから仲介者にならないかと打診をされた時に直ぐに君らが浮かんだんだが、ジョゼフもな。君達に買ってもらいたいらしい。だからアメリカよりも先に声を掛けたんだ』

ハオランの瞳が輝く。
「そうかよ!うちらの方が魅力的って事だな?」
スオウは満足げに微笑んだ。
『そうだろうな』

イーチェンが眉間に皺を寄せた。
「なんでうちに魅力があるんだ?イタリアとアメリカは仲が良いじゃねぇか」
イヴは舌打ちをつきたくなる。どうしてスピーディに話を決めない?面倒臭い人間め。

スオウは首を横に振った。
『いやいや。イタリアとアメリカの関係は脆い。何だかんだと言いながら奴らはヨーロッパを見下しているからな。自分達が1番だと思っている』

確かに今も昔もアメリカは世界の中心であり牽引していく力がある。各国は追随しているものの反感があるのだ。ハオランが舌打ちをする。
「くそヤンキー野郎」

スオウは眉を上げ瞳を煌めかせる。
『どうだ?今回の取引は国だけの話ではない。ヨーロッパとアジアの外交に繋がるんだ。イタリアにとって、さぞかし魅力だろう』
イーチェンの瞳が光った。イヴは見逃さなかった。

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