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アンドロイド転生299

カノミドウ邸 書斎にて

タクミの自己保身にシュウは呆れて頭を振った。
「何を言ってる?タカヤのした事は罪だぞ?」
「確かにそうだが、ここで潰れるわけにはいかない。父さんは孫が逮捕されてもいいのか?」

トウマが声を張り上げた。
「そうだよ!マシンがした事だって罪じゃないか!泥棒だぞ?このままいけばヤバい。祖父ちゃんは俺達の未来の事を考えないのかよ?」

シュウは黙り込んだ。生い先の短い自分より、愚かな孫のタカヤより、未来ある曾孫のトウマ達を守りたい。そんなのは当たり前だ。だが息子達のしようとしてる事は事実の隠蔽だ。

トウマは祖父と父親を交互に見つめた。
「タカミザワサヤカっていうアンドロイドだよ!あいつナニーだったんだ。だけど何年か前に派遣が終わったんだ。ラボに戻った筈だからそのラボの指示なのかもしれない」

シュウは言うなと叫んだが誰も聞く耳を持たない。
「どこのラボだ?」
トウマは首を振った。 
「分からないけど、主人は俺の絵の先生だったから聞けば教えてくれるよ」

「ラボの指示で盗みをしていると一大事だ」
タクミは息子を見た。
「その前に、まずお前は銃を処分しろ。これが世間にバレれればうちの事も足がつく」

タカヤは悲鳴を上げた。
「待ってくれよ!処分なんて嫌だ!」
「馬鹿者!いい加減にしろ」
タクミは怒鳴り、シュウは目を剥いた。

なんて馬鹿な孫なんだ?ダイヤだ銃だと驚かせておいて、今度は銃は処分したくないなどと言い出す。しかもアオイを危険に晒そうとしている。そもそもタカヤの背徳ではないか。

アオイに危険が及ぶ事は断じて許さない。憤りで息が切れた。シュウの心臓の鼓動が早い。それだけじゃない。不規則なリズムだ。胸の中心が苦しい。掌を当てた。座っているのに物凄い倦怠感だ。

何度も深呼吸をした。これは度々経験している発作だ。良くない兆候だ。息子達の声が強弱に響く。3人は其々の意見を言い合っている。途中から何を言っているのか分からなくなった。

頼む。お願いだ。アオイを追い詰めないでくれ。シュウの意識が遠のき、ソファに座っていられなくなった。そのまま床に倒れ込む。気付いたトウマが叫んで駆け寄った。

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