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アンドロイド転生428

港区白金:スオウソラのマンション

チアキはメグを廊下に連れ出すと壁に背を押し付けて首を掴んだ。テイザー銃を取り出し、彼女の胸に狙いを定めた。アオイは廊下にやって来ると慌ててチアキの手を止めた。

アオイは小声で叫ぶ。ソラに聞かれてはならない。
「やめて!傷付けないで!」
チアキは横目でアオイを見た。
「は?何言ってんの?コイツは邪魔よ」

メグは再度警察に通報した。それを察知してイヴがキャンセルする。メグは挫けず通報しようとするがイヴは警察との回線を切ってしまった。メグは悔しそうに唇を噛む。

アオイは囁きながら語気を強めた。
「チアキ、やめて。メグに何もしないで。私が話すから。上手くやるから!同じナニーだったから分かるの。お願い!」

アオイの12年間のナニーの経験で、メグの気持ちが理解出来るのだ。何があっても子供は守る。それが存在意義なのだ。だから私は絶対にソラを傷付けないと約束をするのだ。

チアキがメグの首から手を離すとアオイは彼女の頸のソケットにケーブルを差し、メグの内側に通話を試みた。自分の誠意を理解して欲しい。何よりも人間の心を知ってもらいたい。

『メグ、メグ?聞こえる?驚かせてごめんなさい。大丈夫。ソラは絶対に傷付けない。あと…私はあなたとは違います。マシンでありながら人間の心を持っているの。ね?分かる?』

『人間の心…?』
『そう。輪廻転生をしたの。アンドロイドに変わったけれど心は人間なの。どうぞ、私の記憶を探って。そして信じて』

メグはアオイのメモリに触手を伸ばし、彼女の人間の頃の記憶を探った。鮮やかで豊かな想い出はあまりに美しくて驚いた。成長という変化と進化。メグは初めて人間の本質に触れた。

そして自分とは違うアオイの思考を知った。それは感動の体験となった。同じマシンなのにアオイは違う。色で例えるならば七色だ。無色な自分。それが人間とマシンの違いなのだ。

メグは感無量となった。
『あなたは人間なのですね』
『そうよ。私の指示に従いなさい』
『分かりました』

アオイはホッとした。これでメグは思いのままだ。上手くいって良かった。よし。メグもソラと共に拉致しよう。その方が都合が良い。何と言ってもナニーと子供の関係は深いのだ。

アオイはメグの手を優しく握った。
『私達は友達よ?だからあなたを傷付けたりしない。これから宜しくね?ね?』
メグは微笑んでゆっくりと頷いた。

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