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アンドロイド転生459

青海埠頭

アオイはスオウを見つめた。
「私達に主人はいません。人間と一緒に暮らしてはいますが家族です。そして彼らも私の仲間の…アンドロイドの死を悼んでいます」

スオウは鼻で笑った。
「全く時代は変わったな。マシンが人間と対等だと思い込むとはな。まぁ、今時はアンドロイドを恋人にする人間もいるくらいだからな」

そう。ニュージェネレーションと呼ばれる人間達はマシンと恋をするのだ。反対派も多いが世の中は流動的にどんな事も受け入れる。いずれは婚姻も可能な時代がやって来るかもしれない。

アオイは微笑んだ。
「ええ。そうです。在り方が変わってきましたね。今もそうです。私はマシンでありながら対等にスオウさんと交渉しています」

スオウは不敵に笑う。
「ああ。全く驚きだ。駆け引きをするとはな」
アオイは上目遣いになった。
「あなたの返事次第では脅迫も可能です」

スオウは腕を組む。
「ふん。私とマサヤの命を狙うと言うんだろう?お前もヒロトと同じモデルのアイツと同じで規格外のマシンなのか?人間を倒せるのか?」

アオイは首を縦に振った。
「はい。私もやろうと思えば出来るでしょう。でも暴力は嫌いです。私の…脅迫は…形が違います」
いよいよスオウのもう1人の息子を盾に取る。

アオイはスオウの背後にいるクレハを見た。何の運命の悪戯か。ソラの母親も目の前にいる。まさか母親がクラブ夢幻にいるとは思わなかった。そして彼女も青海埠頭にやって来るとは…。

スオウが拉致された事は彼女にとってはダメージだろう。それなのに更にクレハに辛い事実を告げなければならない。息子が誘拐されたと知ればどんなにショックだろうか。

勿論、子供を傷つけるつもりは毛頭ないが我が子が奪われたと知れば彼女の心が傷つく。大人の争いに幼い子供を巻き込んだのだ。アオイは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

イヴの報告では潜伏先の新宿のカフェで、ソラは安心安全に時を過ごしている。ケーキを食べ、ゲームをして楽しんだようだ。今は健やかに眠りに就ているらしい。

アオイは唇を舐めた。緊張してきた。幼い子供を利用する。誘拐したと言うのだ。両親を脅すのだ。さすがに恐れをなして心臓の鼓動が速くなった。さぁ言え。今…直ぐに…!

アオイは息を吸い込んだ。覚悟を決めた。
「ソラ君は…私達が預かっています」
スオウもクレハもその事実が頭に浸透するのに時間を要した。言葉が出なかった。

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