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アンドロイド転生579

モネの住まい リビングにて

「…お金とかを狙っているのかもしれない」
ルイに渡した携帯電話の件から話が飛躍してきた。モネは母親のサクラコの発想に呆れた。
「ママってば…何を言ってんの?」

「リングが良い例よ。ちゃっかり持ってった」
「私が渡したの。ルイは遠慮したの!」
「それが手口かもしれないわよ」
「ママ!いい加減にして」

サクラコの顔が険しくなった。
「いい加減にするのはモネよ。頭を冷やしなさい。あなたはまだ子供なの。だから世間の事が分からないの。世の中は甘くないの」

モネは思わずソファから立ち上がった。
「もう子供じゃないもん!」
「16歳はまだ子供よ」
2人は見つめ合う。息が荒くなった。

サクラコが場を閉めた。
「渡したリングは返してもらいなさい。明日、ザイゼンに取りに行かせます」
執事アンドロイドに任せるようだ。

モネの顔が紅潮する。声を荒げた。
「ちょっと待ってよ!連絡が取れなくなる!」
「連絡なんて取る必要はありません。別れなさい。直ぐに。ママは許しません」

モネは拳を握りしめて振った。
「別れない!」
「じゃあ、たった今リングの契約を切ります」
モネは口をあんぐりと開いた。

母親の存在がこんなに邪魔だとは思わなかった。理解のなさに腹が立つ。だがこのままではまずい。契約を切られたらルイと永遠に会えなくなる。ルイの住まいも知らないのだ。

モネは唇を舐めて考えた。どうしたらいいの…?まずは時間を稼がないと…。連絡手段を失うわけにはいかない。ここは納得せねばならない。いや。納得した振りだ。

モネはゆっくりと頷いた。
「分かった。リングは返してもらう。契約は切らないで。お願い」
「返してもらったらそれでお終いにする?」

サクラコは畳み掛けた。
「サヨナラね?もう会わないわね?」
「…分かった」
モネは力強く首を縦に振った。

サクラコはニッコリとする。元来、陽気で呑気な彼女は勘ぐったりせず素直に信じた。物事は全て上手くいくというのが気質だ。母親の顔はいつものように穏やかになった。

サクラコを微笑んでワインを飲んだ。
「ああ、良かった!そうよ。別れるのが正解よ。あなたにはいくらでも出会いがあるもの」
モネは無言だ。何を言う?別れるものか。

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