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アンドロイド転生947
2118年12月24日 夜
イギリス:ロンドン
食事を終えて店を出た。見上げると銀の粒の舞。雪が降って来たのだ。ミアは手を伸ばして掌で受け止めた。口元が綻んだ。
「White Xmasだ…珍しい…」
リョウは笑った。
「この時期、村なんか雪が積もってたぞ」
「行ってみたい。リョウの村」
「なーんにもないぞ。四方が山だから」
ミアは悪戯っぽく笑ってリョウの腕を組んだ。
「じゃあ…今日は村じゃなくて部屋に行こう」
「部屋?どこの?」
「リョウの!」
リョウの住まいはミアの家から大通りを隔てたすぐ近くだ。ミアの祖父の持ち物でレンタルしている。リョウは慌てた。女性を部屋に呼ぶと言うのは慎重にならなくてはいけないらしい。
“恋人“でweb検索した時に情報を得た。リョウは真面目な顔をして咳払いをする。
「いや…それは…まだ良くない」
「今迄も行ったよ?」
確かにミアは何度か家に来た事がある。しかしあの頃は“友達“だったのだ。リョウはあっ!と叫んだ。いけない!大事なことを忘れていた!ミアの両親に挨拶していない!
“恋人“になったら親に対して礼節を守らなければ…。奥手のリョウにとってwebが先生だ。
「お父さんとお母さんに挨拶をする!」
「何度も会ってるよ?」
「恋人になりました。大切にしますって言いたい。行こう!早く!」
ミアはそんな真面目なリョウの言葉が嬉しい。
「oh。リョウ…」
15分後。2人はミアの両親と対面していた。弟のレオは不在だ。大学生の彼は有意義に過ごしているようだ。リョウは頭を下げた。
「僕達は恋人同士になりました」
ミアは既に両親に報告済みである。だが2人はリョウの真摯な態度が嬉しかったようだ。父親のアキオは満面の笑みを浮かべていた。
「こちらこそ娘を宜しく頼みます」
リョウはまた頭を下げる。
「それで…僕はまだ暫くこちらに滞在します。ちゃんと仕事を見つけます。ですので…まだ部屋は借ります。宜しくお願い致します」
アキオは頷く。
「うん。分かった」
母親のグレースは目を細めた。
「ずっと居てもイイデス」
リョウはホッとした。グレースは微笑む。
「それで…今晩は…ミアは…リョウのフラット(アパート)に泊まるデスカ?」
「え!」
リョウは目を丸くして手と首を勢い良く振った
「とっとっと泊まりません!!」
「ソウデスカ?」
あらそうなの?と言わんばかりの顔だ。
グレースは娘を見て英語で話し始めた。あまりのスピードにリョウは理解が出来ない。ミアと両親のマシンガンのような会話を黙って見ていた。ミアはニコニコと笑っている。両親も。
ミアはリョウに向かって笑顔になる。
「私達はゆっくりって言った!」
「ゆっくり?何が?」
「何もかも!」
30分後。リョウは玄関にいた。
「お邪魔しました。お休みなさい」
親子3人はにこやかに微笑む。執事のリチャードも。リョウは手を振って雪の中を歩き出した
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