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アンドロイド転生937

2118年12月24日 夜
港区:タカミザワモネのマンション

「ねぇ。カー?ホントに行かないの?」
「はい。楽しんで来て下さい」
2人は玄関ホールにいた。モネは仕方なく靴を履いた。ピンクゴールドのパンプスだ。

スラリとした長い脚に華やかな靴がよく似合っている。春に山で遭難して左の足首を骨折したが手術とリハビリで完全回復した。後遺症もなくスポーツなども以前と同じように行えた。

立ち上がって振り向くとサヤカ(アオイ)は微笑んでいる。いつもと同じ。優しい笑みだ。
「うん…じゃあ…行ってくる」
「はい。行ってらっしゃいませ」

サヤカはにこやかに手を振っている。モネも手を振ると家を出た。これからパーティに参加する。本当は一緒に行きたい。サヤカが元人間だと知ってからその思いは強くなった。

カー(愛称)はただのマシンじゃない。輪廻転生した女性なのだ。心があるのだとモネは思う。だから人間に従事させるのは忍びない。モネは遊びでも買い物でも連れ出すようにしていた。

事情を知らない母親は2人の仲を余程絆が強いと思っているようだ。しょっちゅう“モネは甘えん坊さんね?“だとか“双子なの?“と言って呆れて笑うけど何を言われても構わなかった。

サヤカは大事な育ての親であり、人生の先輩なのだ。今日も誘ってみた。でも丁重に断られた。度々お邪魔は出来ませんと言うのだ。気持ちは分かるけど一緒に楽しみたかった。

秋のイベントではハロウィンパーティにサヤカを連れていった。友人達は歓迎してくれた。サヤカには親しみがあるのだ。骨折した自分のサポートで学校の送り迎えをしていたので顔見知りだった。

皆んなが自分と同じようにサヤカをカーと愛称で呼んでいた。優しくてちょっとドジなサヤカは人気者だ。元人間だとは打ち明けてないけれど、マシンぽくないと思っているようだった。

30分後。パーティ会場に到着した。親友のニナとアンが手を上げて笑顔で迎える。2人共可愛いドレスを着ていた。ニナが目を泳がせる。
「あれ?カーは?」

ほら。やっぱり!とモネは思う。
「邪魔したくないって言うの」
ニナは成程と言う顔をした。
「そっかあ。遠慮したんだね。じゃあ行こ」

会場に入った。客は同じ高校生の集まりだ。他校からも多く来ている。ニナとアンは彼氏探しで大張り切りなのだ。私は…いらない。彼氏はいらない。モネの心にはまだルイがいた。

振られてもう9ヶ月になるが、どうしても忘れられない。学年はひとつ下になるけど自分よりもずっと大人だった。茨城県の集落でひっそりと暮らしていた少年だ。赤毛で銀目の…。

国民じゃない。そんなのは関係がなかった。だって好きになったんだもん。ルイだって自分の事を凄く好きだったと思う。それは確信する。でも…きっとママが余計な事を言ったんだ。

ママは私とルイの仲を反対していたし…。何を言ったか知らないけれど、きっとルイを傷つけたんだと思う。だからもう一度だけ会って謝りたかった。元気かなぁ。何してるのかなぁ。

「モネ?どうした?」
「あっ、あ…うん!」
モネは気持ちを切り替えた。彼氏など必要ないけど楽しいパーティの始まりなのだ。

(同時刻 渋谷区道玄坂)

「ねぇ?綺麗でしょう?」
レナの瞳がキラキラと煌めいた。ルイは同じ部活の仲間とイルミネーションを眺めて歩いていた。2人はレストランに向かっていた。


※モネがアオイに心を寄せるシーンです


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