アンドロイド転生303
カノミドウ邸 書斎にて
タカヤは思いついたように顔を上げた。
「トウマ。うちに忍び込んだサヤカと言うアンドロイドのラボは分かったのか?」
「TEラボだってさ」
トウマはサヤカの主人のサクラコに聞いたのだ。
「4年前に派遣が終わってTEラボに戻った」
「そうか」
「でもサヤカは評価がオールAだ」
主人はアンドロイドが契約期間を満了した時にアンケートに答えるのだ。評価が高いと廃棄を免れて別の場所で従事される事になる。サヤカはオールAだった。サクラコの温情かもしれない。
トウマは眉根を寄せた。
「別に派遣されている筈だって言うんだ。だけどラボに連絡して聞いたら廃棄したってさ」
「おかしいじゃないか」
実際のところ、サヤカ(アオイ)はTEラボから逃亡し断崖絶壁から飛び降りてキリ達に助けられた。キリはアオイの身代わりにバラバラになったアンドロイドの身体を谷に放置した。
TEラボはそれを回収してサヤカは機能停止したと処理した。それが本物であるかどうかは追求しない。サヤカと思われるものを発見した。それで良いのだ。そしてトウマに廃棄したと報告したのだ。
タカヤは眉を上げ、指を鳴らした。
「そうか!TEラボはアンドロイドに盗みをさせているから廃棄したと嘘をついているんだな!」
彼はアオイ達の泥棒家業はTEラボの指示と思い込んで自分の都合の良いように解釈した。
トウマは溜息をついた。全く!違法にダイヤモンドと銃を手に入れたのに棚に上げている。本当にお気楽だ。オヤジはどうも危機感がなさ過ぎる。
「それで…?父さんはどうするつもりさ?」
タカヤは唇を舐めた。瞳が煌めいた。こんな状況なのに楽しんでいるように見える。
「ダークウェブに泥棒のアンドロイドを調べろって言う。で、TEラボだってリークしてやる」
父親は顔の皺を深く刻み渋い顔をした。
「やめろ。何もするな。うちがアンダーグラウンドやらダークウエブなんてものと関わり合いになるのはゴメンだ」
「大丈夫だよ!案外いい奴ばかりだぜ?ちゃんと取引するしさ」
「馬鹿者!お前が金を払うからあっちだって取引に応じるんだ。さっさと縁を切れ!」
「分かってるよ…」
タカヤは父親と話しながらもこっそりとメールを打ってサヤカとラボの泥棒稼業の関わりを調べるようにダークウエブで以前から銃の取引のある通称三銃士に打診していた。
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