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アンドロイド転生689
白水村集落:会議室
タケルは一方的にエリカに暴力を振るった。罰を下さなければならないが、まずは動機の聞き取りが必要だ。ところがタケルは理由を言わず、弁明もしなかった。村を出ると言う。
村長はさすがに慌てた。9年間、タケルと家族だったのだ。そう簡単には受け入れられない。
「タケル、思い直せ。話し合おう」
「いえ。僕の存在が問題だったのです」
そう。エリカは自分を愛し…愛し過ぎて…依存し、執着した。その果てにエマが傷付いたのだ。酷く…酷く。俺がいなければエマは幸せだった。何もかも自分が元凶だったのだ。
タケルは頭を下げると会議室を出て行った。自室に戻る事なく、荷物も必要とせず、身ひとつで山を降りた。麓の車輌保管小屋も通り過ぎバイクにも乗らなかった。ただ歩きどこかを目指した。
集落:リペア室
ルークが入って来た。キリは顔を上げた。
「あ、ルーク。エリカはね、ちょっと頚椎がズレたの。直せる。大丈夫。問題ないよ。どう?タケルは少しは落ち着いた?」
ルークは首を横に振った。
「タケルは出て行った」
キリは目を丸くした。
「え?え⁈」
横になっていたエリカはすぐさま起き上がった。
「なんて言ったの⁈」
「出て行った」
エリカは寝台から降りると猛然と走り出した。
建物から飛び出し辺りを見回す。
「タケル!タケル!どこ⁈」
タケルに通信をするが応答しない。エリカは慌てて山道を降った。足を取られて転がった。
起き上がってエリカは叫ぶ。
「イヴ!タケルはどこ⁈」
『お得意のドローンで追えば良いでしょう?』
そうだ…!エリカは村に戻った。
リペア室に飛び込んだ。ドローンは1台もない。
「ドローンは⁈」
キリは厳しい顔をする。
「あんたには貸さない。ダメだよ」
エリカは地団駄を踏む。顔が怒りに燃えた。
「なんでよ!貸してよ!」
「ふざけるな!あんたの執念深さがタケルを追い詰めたんだ!反省しろ!」
エリカは宙空に顔を向けて叫んだ。
「イヴ!イヴ!何とかして!」
『タケルが決めた事です。私は傍観者です』
「みんな!馬鹿!!」
数日後…。
それからエリカは毎日山を歩き回った。暴力を振るわれても尚タケルを愛していた。村では会議が催されエリカは纏め役に任命されていたが拒否した。それどころではなかったのだ。
だが村長は厳しい顔をした。
「お前には責任があるんだ。放棄したらお前も村を出ていく事になる。そんな覚悟がないなら村の為に尽くせ。誰にも恥じないマシンになれ」
エリカは補佐役のケイに諭され、纏め役の業務をこなした。その合間にタケルを探したが、エリカにはなす術もなかった。結局はエリカの執着心が自分の首を締めたのだ。
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