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アンドロイド転生338

白水村:タカオとキリの寝室

タケルとルークがタカオ達の部屋を去った後、アオイがやって来てドアをノックした。直ぐにキリが顔を出した。アオイは神妙な顔をしている。
「ちょっと話があるの…」

「女同士の方がいいね?」
「うん。お願い…」
2人はリビングにやって来てソファに腰を下ろした。アオイは緊張して手を擦っていた。

チラリとキリを見た。
「あ、あの…転生の事を信じてくれて有難う」
キリは笑顔を見せた。
「事実は小説よりも奇なりって言うもんね」

キリは思いついたように手を打った。
「あ!分かった!だから夜の狩りをしたくなかったんだね?アオイの正義が許せなかったんだ!」
「そう…。ど、泥棒なんて嫌だった…」

キリは納得したように何度も頷いた。
「はいはい。そうか」
「私の父は裁判官だったの。だから私も物事は正しくあるべきと思って育ったの」

キリは驚いた顔をした。
「裁判官を人間がやってた時代なんだねぇ!」
だが直ぐにキリは思い直した。
「とは言えホームも村長が裁判官みたいだけど」

そう。アオイにとっては未来だがホームの暮らし振りはアナログだ。アンドロイドに何もかも委ねているタウンとは違うのだ。アオイは笑った。
「アンドロイドの凄さにいつもビックリする」

キリは笑って手を振った。
「いやいや。それよりも…輪廻転生が本当にあるだなんてそっちの方がビックリだよ」
「そうだね。私だって今でも驚いちゃう」

キリの顔色が一転した。残念そうな顔をする。
「幾つの時に…死んだの?」
「24歳。3ヶ月後には結婚式だったの…」
「そうか…それは無念だったね…」

アオイは溜息をついた。
「で…目が覚めたら80年後。しかもアンドロイド。もう…ショックで。ショックで」
「だろうね」

アオイの瞳に涙が滲んだ。
「親も弟もいない。そして…婚約者も死んでしまったと思っていたの。でも、彼は生きてた。スッカリおじいさんになってしまって…悲しいけど」

キリは同情するように頷いた。
「もし…私も転生して…ルイがおじいさんになってたら…悲しくて悔しくて…どうにかなっちゃう」
「そうね。子供なら尚更だね」

キリは立ち上がると水を入れて戻ってきた。
「飲もう。喉を潤わそう」
アオイは礼を言ってグラスを受け取った。アンドロイドの人工皮膚には保湿が必要なのだ。

キリは水を飲むアオイをじっと見つめた。アオイが摂取出来るのは水だけだ。元人間ならば食事もしたいかもしれない。転生したことによりアオイは失ったものが多いのだなと実感した。

やがてアオイは改めて神妙な顔をした。
「あ、あのね?話したいのはね?戦闘用マシンを造ったでしょ?それで…ホームの為に戦うのは分かるんだけども…トワの仇を討つのも分かるんだけども…。本当にそれで良いのかな?って思って」


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