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アンドロイド転生458

青海埠頭

スオウの側近のトミナガは肩を銃で撃たれ出血していた。高熱を出して意識を失い倒れた。直ぐにでも処置をしなければ命は危うかった。彼の傍にいるクレハの顔が青褪めた。

アオイがスオウに提案をした。
「私の仲間が病院に連れて行きます」
「何を言ってる…?私と息子の命を奪おうとしてるお前らなど信用が出来るものか」

アオイの瞳は真剣だった。
「こちらを信用しないとあなたの部下は死にます。私は命の大事さを分かっています」
スオウは鼻を鳴らし不服そうな顔をした。

クレハはトミナガを見つめた。彼の肩から血が溢れて来る。クレハはドレスの裾を破いてトミナガの肩に巻き、きつく締めた。
「あなた!病院に連れて行ってもらおう!」
 
スオウはクレハを振り返る。
「コイツらなんて信用が出来ん!」
「トミナガが死んでも良いの?強情を張っても意味がない!」

クレハはアオイに顔を向けた。
「病院に今直ぐに連れて行って!絶対に助けると誓って!そして逐一報告して!」
「分かりました」

アオイは振り返り、コンテナを見回した。
「No.8!来て!」
コンテナの陰に身を潜めていたNo.8が立ち上がるとアオイの前にやって来た。

アオイは彼を見上げた。
「イヴに1番近い病院を探してもらう。緊急搬送の手配を取る。今直ぐに連れて行って」
「はい」

No.8は歩き出すとスオウの横を通り過ぎ、倒れているトミナガを軽々と抱き上げた。車に乗せると急発進をして埠頭から出て行った。クレハが心配そうに見送った。

イヴがアオイに通信する。
『4分で病院に到着します。トミナガ氏の容体を精査しました。間に合うでしょう』
アオイは安堵する。トミナガは助かるのだ。

「あの人は大丈夫だそうです。助かります」
クレハは両手を口元に当て安堵するように目を閉じた。スオウの表情がほんの少し緩んだ。残忍な男でも心はあるのだ。

スオウは腕を組んでアオイを見つめた。
「さて。話の続きだ。お前の提案などには乗らん。仲介者なんぞにはならないって事だ」
「では…復讐もやめないんですか?」

スオウはアオイに射るような眼差しを向けた。
「お前の主人を教えろ。責任を取ってもらう」
アオイは首を振った。
「私に主人はいません」

スオウは首を傾げた。
「ヒロトと同じモデルの野郎も同じ事を言ったな。主人はいないと。だがな?マシンが自ら行動するなんて有り得ない」
「そうじゃないのもいるんです」

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