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アンドロイド転生909

(回想)
2118年10月27日 
スオウ組事務所

建物の前に車が停まり2人の男が降りた。リツとソウタだ。彼らの顔は引き締まり、並々ならぬ決意がその瞳に宿っていた。ソウタは1人で行くつもりだったがリツも同行したのだ。

エントランスで来訪の旨を伝える。間もなく執事アンドロイドがやって来て門で出迎えた。そこに少年が飛び込んで来た。執事を見上げる。
「ハヤカワ!パパいる?」

ハヤカワはニッコリとした。
「はい。いらっしゃいます」
少年は振り返るとナニーを呼んだ。
「パパいるって!早く早く!」

ナニーアンドロイドがやって来た。リツ達に目を向けて客対応マニュアルで頭を下げると微笑んだ。リツは目を丸くした。
「メ、メグ…!」

少年は驚いた顔をしてリツをまじまじと見つめた。暫くすると大きく口を開けた。
「お、お兄ちゃん…。リツ兄ちゃんだ!」
「ソラ君…」

ソラは瞳を輝かせた。
「やっぱりいたんだ!ホントだったんだ!夢じゃなかった!パパもママも夢だって言ったけど、そうじゃないってずっと思ってた!」

少年の名前はスオウソラ。スオウトシキの次男で10歳だ。今年の3月のスオウとの戦いでプランBの人質としてチアキが拉致した。真夜中にメグと共に平家カフェにやって来たのだ。

ソラはメグの腕を掴んだ。
「ね!ね!メグ!僕の言った通りでしょ!」
メグは覚えていない。彼女の記憶を消去したのだ。平家カフェが暴かれないようにする為に。

メグはソラを見下ろして首を振った。
「私はこの方を存じ上げません」
「もう〜!なんで忘れちゃったの?夜中に行ったじゃん。ケーキ食べてゲームしたじゃん!」

ソラはリツを指差した。
「この人と!リツ兄ちゃんと!」
メグは左右に小首を傾けた。ソラは眉間に皺を寄せて頬を膨らませた。そんな顔が愛らしい。

ソラはリツを見上げて瞳を輝かせた。
「なんで来たの?パパに用事?仕事の話?」
リツはこんな展開に驚いていた。まさか…またソラと会えるなんて想像もしなかった。

「僕はねえ!ハロウィンパーティの相談!うちでしていいかってパパに聞くの。行こ。パパはこっちだよ。来て!早く早く!」
ソラの後をリツとソウタと執事が追った。

執事のハヤカワが扉をノックする。開かれると側近のトミナガが顔を出した。ソラに気付く。
「坊ちゃん…」
「来ちゃった!パパに話があるんだ!」

ソラはリツを指した。
「リツ兄ちゃんは僕の友達なんだよ!」
トミナガが応えるよりも早く部屋に入って行く。リツ達に手招きをしながら。

室内にはスオウがいたが慌てている。
「ソラ…来る時は前もって連絡をしなさいと言ってるだろう。何しに来たんだ…」
「凄く急いでるんだ!お願いなんだ!」

スオウはソラの後ろにいる男2人を見た。リツとソウタは頭を下げた。ソラの瞳が煌めく。
「パパ!あれは夢じゃなかったんだよ!リツ兄ちゃんはいたんだ!」


※ソラが平家カフェに訪れたシーンです



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