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アンドロイド転生357

東京都葛飾区:カガミソウタの邸宅

ソウタは宙空のホログラムのイヴを眺めていた。彼女はソウタにイタリアマフィアの爆弾取引の橋渡しになれと言う。ソウタは上目遣いになり口をだらしなく開いて鼻をポリポリと掻いた。

イヴの瞳は煌めいた。
『ソウタさん、私がいます。あなたの事は厳重に守ります。では早速、イタリアにコンタクトを取って下さい。時間がありません』

ソウタは悩んだ振りをしているが、本当は心が躍っていた。ソウタは危ない橋を渡る事が好きだった。上手くいく自信があった。自分の能力の上に更にイヴという強みもあるのだ。

ソウタはイヴのホログラムを見上げた。
「イタリアは今何時よ?」
日本はもうすぐ真夜中の12時だ。
『時差は8時間。あちらは15:46分です』

「まだ明るい時間なんだな」
『はい。そうです。ティータイムの時間です。大変良い頃合いですね』
「よし」

ソウタはパネルを操り14年振りにイタリアマフィアの最大組織のルチアーノ家にアクセスをした。コンピュータがソウタの侵入に対抗したが難なく突破する。AIはすかさず二重三重のプロテクトをかけた。

イヴがソウタに力を貸し、ルチアーノのAIと攻防になった。イヴはコンピュータに打診をする。
『こちらは戦うつもりはありません。あなたの主人と連絡を取りたいのです。許可をお願いします』

コンピュータAIはイヴを敵ではないと判断した。
『分かりました。お待ち下さい』
AIはまず主人の執事アンドロイドにコンタクトを取った。


イタリアナポリの邸宅

執事は主人のジョゼフ・ルチアーノにコーヒーを淹れ、慇懃にカップを手元に置いた。
「旦那様。日本からお目通り願いたいと希望があります。どうなさいますか?」

ジョゼフは顔色ひとつ変えなかった。老人であってもその瞳は理知に溢れ、かつ得体の知れない凄みがあった。彼はコーヒーを一口飲んだ。
「放っておけ」
「はい」

AIは執事からの通信を受け、ソウタに答えた。
『残念ですが、拒否されました。ご機嫌よう。さようなら』
ソウタは舌打ちをする。どうやらルチアーノは一筋縄ではいかないようだ。

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