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アンドロイド転生668

東京都港区の病院:モネの個室

アオイ(サヤカ)が扉を開くとモネが通話をしていた。宙空にエリカの立体画像が浮いている。モネがアオイに気付いてこちらに顔を向けた。大きな瞳から涙が零れていた。

アオイは目を丸くする。
「モネ様!どうなさったんですか!」
「カー…」
モネの顔は悲しみでいっぱいだった。

立体画像のエリカが微笑んだ。
『アオイ。元気?』
「何でモネ様が泣いているの?」
アオイの口調がきつくなる。

『ルイがモネと話したくないって伝えたの』
アオイは胸がキュッと掴まれたようになる。そうか。モネはエリカに媒介して貰おうと連絡したのか。そして…彼に拒否されたのか…。

モネはアオイを見つめて泣き出した。
「ル、ルイは…私と話したくないんだって。ねぇ…?もう終わりなのかな。やっぱり…私の事を嫌いになっちゃったのかな」

アオイはベッドに走り寄ると、モネの手を優しく包み込んだ。モネが悲しみに暮れると胸が痛い。慰めたい。労わりたい。護ってあげたい。
「モネ様…」

アオイは思い出す。3日前の病院のレストランでの出来事を。サクラコはルイと両親に宣言したのだ。娘と別れて欲しいと。国民でもないルイとの付き合いを認めないと。

それだけではない。近親婚の末の弊害を(メラニン色素の欠乏)指摘した。彼女は遺伝子に並々ならぬ思い入れがあるのだ。だからこそ子供は精子バンクを選択したのだ。

キリ達は憤り、息子を擁護した。2人の仲を認める発言もした。だがルイは憤怒してその場から立ち去り、モネに別れを告げたのだ。一方的な宣言にモネは納得が出来ないのだろう。

この一連の件をとてもモネに伝える事は出来なかった。言えばモネはサクラコを恨むに違いない。親娘の絆を壊したくない。だがルイがモネを嫌っているなどと嘘は言いたくなかった。

エリカはさも分かっているとばかりに頷いた。
『男なんて…コロコロ気持ちが変わるんだよ。好きになったり嫌いになったりね…』
アオイはエリカを睨む。

そんな簡単な事を言わないで欲しい。ルイの苦悩やモネの悲しみを知らないくせにと思う。
「エリカ。じゃあ!またね」
再度口調がキツくなった。

エリカの顔があからさまに憤る。アオイを刺すように睨んだ。2人の視線が交差した。
『アオイはずっとそっちにいてね。じゃあね』
エリカの画像が消え失せた。

アオイはエリカが自分を嫌っている事を知っている。村に帰って来て欲しくないのだろう。自分だってモネの側にいたい。だがモネは16歳。ナニーがいて良い年齢ではないのだ。

「モネ様。物事は全て時間が解決するものです。足掻いて行動を起こしても上手くいかない時があります。耐え忍ぶ時もあるのです」
「連絡をしない方がイイって事…ね…」

アオイはハッとなった。元婚約者のシュウとどうしても連絡を取りたくて何度も手紙を書いた事を思い出した。自分の事を棚に上げている。そんなに自分は偉いのか。恥ずかしくなった。


※アオイがシュウに手紙を送ったシーンです


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