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アンドロイド転生636

メディカルセンター:中庭

タケルは仲間のエイトと共に桜を眺めていた。10時半を過ぎた。モネのオペが終わった頃だ。成功したのだろうか。アオイがやって来る。麓に迎えに行くのだ。吉報を伝えたい。

タケルはルイの父親に通信した。
「タカオさん。オペはどうなりましたか?」
『成功した。ICUから一般病棟に移った。本人は眠っている。俺達は病室の前にいる』

それから約1時間後。アオイから連絡が来た。
『麓に着いたの。迎えに来て』
雪道で難儀したようだ。普段よりも倍の時間がかかった。タケルは車で迎えに行った。

山道には神妙な顔をしたアオイとサツキがいた。
「サツキも来たのか」
「サツキさんはモネ様の幼馴染のナニーだったの。モネ様を赤ちゃんの頃から知っているの」

アオイ達は車に乗り込んで、タケルの方に身を乗り出した。表情が真剣だ。
「モネ様のオペは?成功したの?」
「成功した。一般病棟に移ったそうだ」

アオイは見るからに安堵した。
「ああ…!神様…!」
アオイは頷いた後、また身を乗り出した。
「昨晩の様子を教えて」

タケルは虚空を眺めた。
「俺が…麓に到着した頃は…雪が強かった」
タケルの目の前に宵闇の中に多くの樹木が屹立し、辺りを白く舞う景色が蘇った。

エリカ達のドローンが宙空に幾つも浮かんでおり、モネの居場所に誘導した。鬱蒼とした茂みの中の傾斜を見下ろした。高感度アイがルイ達を捉えた。飛ぶ様にタケルは駆け降りた。

モネは意識がなく、足首を骨折していた。身体は冷え切っており顔色が真っ青だった。モネを背負い執事アンドロイドのザイゼンの車に彼女を運んだ。元ナースのアリスの指示の元に救命した。

救命したとは言っても、ほぼ何も出来なかった。全裸にして温めるという事に躊躇したのだ。アンドロイドのエイトが活躍した。こんな時は無自我のマシンの方がスムーズだ。

タケルはアオイを振り返った。
「執事の首が折れて、いつも曲がっていたよ」
アオイは目を丸くする。
「え!ザイゼンさんの?首が?」

タケルは微笑んだ。
「責任を取って廃棄すると言い出したんだが…主人が諭した。お前を呼ぶと言ったら凄く喜んでいたぞ。今朝早くラボに行った」

アオイはサクラコ達を想って心が温かくなった。また会えるなんて…。運命とは偶然と必然で成り立っている。車は雪道を疾走した。5分後。アオイはメディカルセンターに足を踏み入れた。

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