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アンドロイド転生358

茨城県白水村の集落:リビング

アオイとキリの叔父のケンジが睨み合っていた。宿敵のスオウとの取引に彼の息子を誘拐して脅すと言う突飛的なアオイの策にケンジは憤っていた。なんて間抜けなんだ?

2通りの提案をアオイはスオウに持ちかけると言う。飴と鞭。利益と脅迫。だがスオウにとって利益になる策はこれから考えるのだ。あまりにも浅はかで杜撰な計画だ。

ケンジは呆れ、アオイを睨んだ。
「お前は馬鹿か?」
アオイは口元を引き締めた。
「火事場の馬鹿力ってあるじゃないですか」

宙に浮いているホログラムのイヴが微笑んだ。イヴは同時多発的に存在する。今彼女は平家カフェのリビングとカガミソウタのコンピュータルームにもいるのだ。イヴは微笑んだ。

『アオイ。その通りですね。誰しもがここぞと言う時に力を発揮するものです。ところで皆さん、プランAが見つかりました』
「え!ホントに?」

アオイは目を輝かせた。さすがにイヴだ!やっぱり優秀だ!アオイは隣にいるサツキを見やって身体を弾ませた。彼女の手を握って何度も頷いた。サツキも笑顔になった。

ホログラムのイヴはニッコリとした。
『アライブというダークウェブのバイヤーの協力の元、動き始めました。手始めにイタリアマフィアを利用します』

マフィア?と人々が口々に叫び当惑する。ケンジがまた怒りを露わにした。
「馬鹿な!イタリアマフィアがそう簡単に動くわけがない!甘い!」

イヴも残念そうな顔をした。
『はい。確かに、最初のコンタクトは拒否されました。でもアライブは優秀です。上手く立ち回ってくれるでしょう』

ケンジは眉を釣り上げた。
「デッドだかアライブだか知らんが、ダークウェブなんだろう?そんな奴なんて信用が出来るものか!怪しすぎる!」

イヴは微笑む。
『でも新宿のカフェとはバイヤー同士で10年の付き合いです。ホームの人達もタウンの人間を信用してみるのも良いかと思います』

ホームの人々には因縁があった。69年前にタウンの輩にホームが襲われ20名の人命を失ったのだ。その恨みは大きかった。タウンとは相容れないという暗黙の了解があった。

ケンジが何かを言おうとした時、それを制した者がいた。村長でケンジの兄でもあるドウガミサトシが弟の肩を叩いた。
「まぁ、落ち着け。おまえは短気でいかん」
「兄さん!しかし!」

サトシは余裕の笑みを浮かべ人差し指を揺らした。
「プランが色々とあるのは良い事だ。それが突破口になる事もある。…アオイ、行ってこい」
アオイは目を見開き力強く頷いた。

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