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アンドロイド転生546

東京都新宿区:平家カフェ

深夜。ドウガミリツの寝室。リツはベッドに横たわり、その隣にはアリスがいた。アリスは細心の注意を払ってリツに寄り添う。アンドロイドは人間より遥かに重いのだ。

アンドロイドの骨格を成しているのはチタンである。比較的軽い金属だが人間の骨に比べたらその重量、強度を遥かに上回る。それがマシンの強靭さの所以なのだ。

皮膚は人間の皮膚細胞を培養したものだ。その保湿力の高さのお陰で見た目は人間と寸分違わない。そして筋肉はラバーアクチュエーターという高強度繊維を利用している。

様々な化学技術力で作り上げられたアンドロイド。人間など一瞬で倒せる程の能力を持つ。だからこその殺人暴力禁止機構なのだ。人間に対して絶対的な服従である。

アリスはリツの胸の鼓動を感じていた。
「逮捕されてしまって本当に本当に心配だった。怖かった。私はやっぱりあなたが好き。心から大事なの。愛してる」

リツは微笑んだ。
「俺もだ。アリスが大事だ。凄く…凄く」
「ね…?あなたは…子供は欲しくないの?私と…ずっと一緒にいたら…叶わなくなる」

アリスは数年前から気にしていた。リツと付き合って8年。リツは29歳になった。彼が子供が好きなのも好かれるのもよく知っていた。リツは自分の血を継ぐ存在が欲しいのでは…。

リツは天井を見つめていた。
「俺のジェネの性質は変わんないよ。人間の女にも男にも興味がない」
「私で良いの?本当に?ずっと?」

ジェネとはニュージェネレーションの略で、アンドロイドが恋愛対象の人間の事だ。リツの初めての恋の相手はアリスで、それはずっと変わらない。心優しいアリスに惚れている。

リツはアリスを抱き締めた。
「うん。ずっと。アリスが好きだ」
アリスはリツの想いが嬉しかった。
「私も。ずっと、ずっと好きよ」

リツの瞳が真剣だった。
「アリス。ずっとここにいろよ。ホームに帰るなよ。父さん達だって喜ぶぞ」
「本当に?いてもいいの?ホント?」

2人は見つめ合い口づけを交わした。何度重ねても新鮮で益々愛情が深まる。リツがアリスの首筋に唇を這わす。これから親密な時間が始まるのだ。アンドロイドにはその能力があった。

だが快感と言う機能はない。しかし自我の芽生えたアリスの意識には愛情という心が生まれた。他者を慈しむ気持ちだ。自分がリツに喜びを与えられる事が幸せだった。

※リツとアリスの恋が始まった時のシーンです


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