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アンドロイド転生454

青海埠頭

アオイは声を張り上げた。
「あなたがサインをすれば完了です!」
スオウは鼻で笑った。
「ふん。馬鹿な」

アンドロイドが爆弾取引の計画を立て、売り手買い手と共に署名させたなどとはスオウは俄かに信じられなかった。しかもスオウ組を仲介者に立てると言う。その莫大な手数料で手を打てと言う。

アオイは自信ありげに微笑んだ。
「馬鹿かどうか確かめてみませんか?」
アオイの真上に浮かんでいたドローンが移動して、スオウ達の宙空で停止した。

ドローンから映像が投影された。イタリアマフィアのジョゼフ・ルチアーノと中国蛇頭のワン兄弟が契約書に署名をした様子が見てとれた。スオウは驚きに目を見開く。

海千山千のジョゼフとワン兄弟を動かしたとは信じられない。一体どんな技を使ったのか。
「本当に契約したのか」
「ええ。簡単でしたよ」

そこにジョゼフの立体画像が浮かんだ。ジョゼフは微笑みながらも眉根を寄せた。
『おい。トシキ。いつになったら仲介のサインをするんだ?祝盃を上げようぞ』

ワン兄弟の立体画像も浮かんだ。2人は雀卓を囲んで牌を打ちつけている。
『スオウさんよ?さっさと署名しろよ。俺達の気が変わらないうちにな!』

イヴはスオウトシキのフェイク画像を作った。
『すまんな。直ぐにサインするさ』
スオウは目を剥いた。そうか。こうやって偽物の自分を使って彼らを騙したのか。

スオウは唸った。アメリカを出し抜いて人種の違うヨーロッパと中国を取引をさせたのか。あの慎重派の兄のイーチェンを動かすとは、驚く話だがこれは疑う余地はなさそうだ。

アオイは再度声を張り上げた。
「如何ですか?両者から其々に売買代金の8%がそちらの取り分になります。かなりの額です。それで怒りを…怒りを収めてはくれませんか?」

アオイは更に続ける。
「そして…お願いがあります。私達の家族があなたの攻撃で死にました。謝罪して下さい」
「…謝罪だと?」

スオウはコンテナの陰から出て身を晒した。人間に向かってアンドロイドが何たる言い草だ。しかも全く身に覚えのない事だ。怒りが沸々と湧き上がって来て、危険も顧みなかった。

スオウは不快さを顔に滲ませた。
「さっきからアンドロイドが死んだと言ってるが何の事だか分からんな」
スオウは本当に無実だった。

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