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アンドロイド転生306

茨城県白水村:リペア室

『キリ。リョウ。ダークウェブ内に情報が錯綜しています。10年前から都心で盗みが発生しており、その犯人がTEラボのアンドロイドである…と。どうやら暴かれたようです』

キリとリョウは宙空にに浮かぶイヴの美しい姿に声をかけられた。肉体のないメモリの存在のイヴは、女性モデルの立体画像を作ってあたかも目の前にいるかのようだ。

キリは眉間に皺を寄せた。
「え?バレたの?」
ホームにいるアンドロイド達に泥棒稼業をさせて10年。それが拡散されたようだ。

彼らはその優れた知性と強靭な肉体で難なく事を成した。奪った金品はダークウェブ内の何層もあるサイトのより強固な下層で厳重に管理され売買された。ホームはその莫大な資金を手に入れた。

新宿にいる平家カフェはダークウェブ内のバイヤーからターゲットを指定される。お互いに持ちつ持たれつの関係。公にする事はない筈だ。ではどこからTEラボのアンドロイドだと暴かれたのか。

キリは腕と脚を組んだ。たとえバレたとしても私は動じない。不敵な様だった。
「で?ホームの事もバレたの?」
『いいえ。まだそこには辿り着いていません』

一方リョウは慌てていた。
「まずいぞ。きっと直ぐにホームがバレる」
キリは自信ありげに微笑む。
「世の中にはアンドロイドの会社が30もある。混乱させてやろう」

キリはイヴを見上げた。
「ダークウェブに拡散させて。TEラボじゃなくて…ランドラボやエックスラボだって。他にもどんどんラボの名前を出して」
『はい』

キリの思惑通りTEラボ以外の会社名がネットに流れると住人達の意見が飛び交った。
〉えー!ランドはうちの執事だよ!
〉エックスかもよ?ヤリそうじゃねえ?

他にも尤もらしくマシンの構造を説明してスペック的に盗みが働けると自論する者もいる。
〉Qラボなら出来そうだぞ
実は撹乱する為にイヴが流したのだ。

次から次へと偽りの声をアップする。キリは空中に浮かぶ文字を眺めて満足そうに微笑んだ。
「イイ感じ。その調子でやって」
イヴはニッコリとして頷いた。

リョウも楽しそうだが我に返った。
「暫くは夜の狩はやめよう」
キリは尤もらしく頷いた。
「そうだね。休むか」

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