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アンドロイド転生729

2118年5月11日 午後11:05

白水村:エリカとアリスの部屋

『エリカ。話があるの。ちょっと来て』
キリからの通信を受けた。エリカとアリスはベッドでお喋りに花が咲いていた。こんな時間に何だろう?2人は顔を見合わせた。

アリスと過ごすのは今晩限りだ。彼女は明日また新宿へ行く。恋人のリツの側にいたいのだ。彼の両親も息子とアンドロイドの仲を認めており、まるで娘か嫁のようにアリスを愛してくれていた。

アリスはミオが復活したので安心して行けると喜んでいる。だがエリカは少し寂しかった。アリスとは親友だし姉妹のようなものだ。今度はいつ村に戻って来るのだろうか。

アリスは優しいアンドロイドだ。タケルが去った事を悼み、エリカの心に寄り添ってくれている。それに事件の詳細について尋ねて来ない。他者に気遣いが出来る彼女らしい。

タケルは自分を殺す勢いで襲って来た。ハスミエマを追い詰めた事が許せなかったのだと暫く経って気が付いた。エリカは他者の気持ちを汲み取る能力が劣っているのだ。

それでも自分がした事の罪深さに反省などはしていない。邪魔者は消す。その結果、エマは日本を去った。清々した。ただタケルを失った事だけが辛かった。その思いだけだった。

アリスは不思議そうな顔をする。
「こんな時間に何だろうね?」
エリカは小首を傾げた。
「うーん。兎に角行ってくる」


リペア室

扉を開くとエリカは目を丸くした。居たのはキリだけではない。リョウやケンジは当然だが、キリの夫のタカオと何故か村長までもがいるのだ。エリカは驚きつつも部屋に入った。

「何の会合?」
リョウは気難しい顔をしていた。
「エリカ。寝台に横になってくれ」
「なんで?」

キリが椅子から立ち上がった。
「メンテナンスをするの。動作確認をしたいから意識はそのままね。さ。横になって」
キリは寝台をポンポンと叩いた。

悪知恵の働くエリカは勘が良かった。
「嫌だと言ったら?だってなんか変な雰囲気」
タカオは微笑むとエリカをエスコートするように背に手を当てて誘った。

村長が厳しい顔をしていた。
「エリカ。纏め役ご苦労さん」
「村長。褒めてくれる言葉の割に顔が怖い」
「そうかな」

エリカは眉根を寄せる。どうも何かがおかしい。だが彼女は勘が良くても想像力が欠如していた。だからこそ他者を傷つける事が容易いのかもしれない。痛みを知ろうとしないのだ。

まさか自分が機能停止(死)になるとは夢にも思わず渋々と寝台に横になった。エリカの顔の周りに人が集まって来た。エリカは苦笑した。
「何よ…何よ?皆んな」

キリがエリカを見下ろしている。直ぐにエリカの頭部を胴体から切り離した。
「キリ。怖い顔してるよ?」
「あんたのした事の方がずっと怖いよ」

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