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アンドロイド転生1003

2119年10月20日
目黒区 サキのマンション

サキのスマートリングに通知が来た。
「ケイ!合格した!」
都庁に遺伝子バンクの申し込みをしていたのだ。自信はあったがホッとする。

1週間前のこと。サキは健康診断書や預貯金や収入証明書などを提出して申込書にサインをした。審査が降りた事でこれで晴れて遺伝子バンクに行けるのだ。嬉しくて小躍りしたい気分だった。

(翌日 遺伝子バンクセンターにて)

サキとケイは緑溢れる立派な施設にやって来た。多くの人が訪れている。建物内に足を踏み入れるとホールには赤ん坊のホログラムが幾つも浮いていた。それだけで胸がいっぱいになる。

カウンターに着くと担当者は微笑んだ。
「こちらがドナーの情報です。膨大なデータがありますので選ぶのにお時間は掛かると思いますが、その分ご納得が頂けるかと思います」

サキの目前には様々な人種の男性達の顔の立体画像が浮いていた。どれも無表情だ。
「お気に召したドナーがあったら詳細をクリックして下さい。他の画像が見れますよ」

サキはまずは適当に選んでクリックしてみた。別のページが立ち上がり、ドナーの全身の画像が現れた。360℃どの方向からもチェック出来る。食事のシーンやスポーツの場面もあった。

笑顔だったり怒った表情だったり悲しそうな顔など多彩だ。ボイスをクリックするとドナーは自己紹介を始めた。サキは成程と思う。これならば相手の事を詳しく知れる。

「ドナーは学力と性格テストもしています。一定の水準をクリアした方ばかり。こちらも詳細がご覧になれますのでチェックして下さい」
「はい」

「例えば…こんな探し方もあります。眉毛、瞳、鼻筋、唇、顔の形などご自分の顔の好みを入力します。すると似たようなドナーが現れます」
「へぇ…!それは楽しいですねぇ!」

「ドナーアプリをダウンロードして下さい。ご自宅に戻ってごゆっくりと選んで下さい」
それは有難い。昼夜問わず好きな時に探せるのだ。早速アプリをダウンロードした。

次にナースに呼ばれて検査室に案内された。血液とホルモンの値を調べられる。直ぐに結果が出て数値に問題がないため採卵する事になった。卵子は凍結されドナーを待つのだ。

「麻酔して腹部に穿刺して採卵します。ですが麻酔が切れると2〜3日は痛みが発生します」
覚悟の上だ。未来の事を思うとなんでもない。私は母になるのだから。

帰宅するとケイと2人でドナーを見始めた。
「ケイにそっくりな人を選びたいの」
「そしたら子供は僕に似るかな?」
「うん!そうなるよ!親子みたいだよ!」

ケイは微笑む。彼は自意識が芽生え、自己を認識する能力がある。幸や不幸も理解する。そして勿論愛も。サキが愛おしい。だから子供が欲しいと言えば叶えてあげたいのだ。

「ケイと似たデータで探してみよう!」
ウェーブがかった黒髪。アーモンド型の瞳。濃い睫毛。細い鼻梁。ふっくらとした唇。色白。入力すると間もなく多数のドナーが現れた。

ケイによく似ていて嬉しくなった。次々とクリックした。東洋人が多かったが混血もいた。詳細を開いて自己紹介や学力、性格、趣味を確認する。10日後決定し、遺伝子センターに連絡する。

技師はサキの凍結卵子とドナーの体外受精を行い、無事に受精卵が完成したと報告して来た。20日後。サキとケイはセンターに再訪した。いよいよ次の段階に進む事になったのだ。

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