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アンドロイド転生540

白水村の集落:リペア室

ミオのウィルスプログラムが解凍されるまであと39時間。時間勝負だ。イヴ達はウィルスをデリートする為に格闘し、タケルはゲンと交渉する。アオイもミオを救う為に協力がしたかった。

村長のドウガミサトシは仲間を見つめた。
「どうかミオの無事を祈っていてくれ」
人々は何度も頷いた。アンドロイドであってもホームの仲間だ。家族だ。身内なのだ。

一同は食事を終えて席を立った。いつもは夕食後のひと時を賑やかに和やかに過ごすが、ホームの空気は重かった。アオイとサツキは食器の片付けを始めた。仕事がある方が気が楽だ。

人間の女性達もアオイに倣う。ホームでは人間とアンドロイドは平等だ。家事炊事雑事全て共同で行う。それがここでは当たり前なのだ。人々にとってアオイ達は家族だ。

だがタウンではアンドロイドは人間に従事する立場だった。それはそうだろう。人間の生活をより快適にする為にアンドロイドは生まれたのだ。彼らにとって便利なツールに過ぎない。

キッチンで洗い物を始めようとしたアオイとサツキに女性達が声を掛けた。
「いいわよ。ここはするから。ミオのところに行ってやって」

アオイはそういった人々の優しさを痛感する。
「有難う御座います」
別の女性がアオイの背後から声を掛けた。
「あ、じゃあこれをキリ達に持っていって」

アオイが振り向くと女性はにっこりと微笑んでトレイを差し出した。オニギリとサンドイッチとボトルの野菜ジュース。そうだ。キリ達は昼からずっとウィルスと格闘中だ。

アオイは受け取るとキッチンから出てサツキと共にリペア室に向かった。扉が開く。宙空には立体画像のイヴが無表情で浮かんでいる。キリとリョウはホログラムコンピュータの前だ。

ミオは寝台に横たわり目を瞑っていた。泣きそうな顔をしている。さぞかし不安だろう。傍には恋人のルークがミオの手を握っている。端正な横顔は何とか助けたいと言う意志が表れていた。

アオイはトレイを持ち上げた。
「キリ。リョウ。ご飯よ」
2人共、振り向きもしない。再度声をかけるが微動だにしなかった。アオイは言葉に詰まる。

アオイの背後から手が伸びて、トレイを掴むとキリとリョウの間のデスクに勢いよく置いた。
「おい。お前ら。食え」
リョウの父親のケンジだった。

ケンジはリョウの椅子を奪うように座った。
「俺がやる。ジジィだってやれる」
ケンジは村長の弟でキリの叔父だ。彼もコンピュータのプロだった。

※以下は過去のケンジの登場シーンです


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