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アンドロイド転生423

イタリア:ジョゼフ・ルチアーノの邸宅

ジョゼフ達の目の前に黒いネズミのホログラムが浮かび上がった。アライブだ。
『ルチアーノさん。1時間経ったよ〜!どう?決めた?爆弾を売る?』

アライブから爆弾取引の売り手になるかと打診をされ、1時間の猶予を与えられたのだ。ベルナルドとアントニオはほくそ笑んだ。その間にお前の正体を掴んだぞと。

ジョゼフは余裕の笑みを浮かべた
「取引に応じよう」
ベルナルドが目を剥いた。
「お、おい?兄貴、何を言ってるんだ?」

アントニオがジョゼフに走り寄った。
「父さん、何でだよ?」
ジョゼフは蝿を払うように手を振った。
「黙っていろ」

ベルナルドとアントニオは顔を見合わせる。アライブの身元が分かったんだ。クソ野郎の言いなりにならず反撃をすればいい。何故取引をするのだ?ジョゼフは何を考えているんだ?

ジョゼフにとって、アライブは憎いものの取引としては悪くない。ワン兄弟が爆弾の買い手になると知って興味を持った。彼らには潤沢な資産と軍事力がある。まだ若い2人は気力も体力も充分だ。

中国と密になると言う事はアジア全土も手に入れられる。ヨーロッパと大国アジアが組めばその力は強大だ。アメリカなど恐れるに足らぬ。ビジネスを滞りなく済ませ、更なる発展を遂げよう。

ジョゼフはネズミを見つめた。
「買い手は中国の蛇頭でワン兄弟だったな。そして、仲介人は…」
『物分かりがイイ〜!最高!』

ネズミが指を鳴らすと初老の男性の立体画像が浮かんだ。スオウトシキだ。
『仲介人は日本のヤクザ。スオウ組。このおっさん。手数料は双方から売買代金の8%ね!』

ジョゼフは頷いた。
「いいだろう」
その後、爆弾の量。グレード。価格。期日。取引場所などの詳細の話が済んだ。ジョゼフにとって満足のいく契約内容だった。

ネズミはまた指を鳴らした。ホログラムのゴルフボールサイズの球が浮かんだ。契約書だ。ジョゼフが口頭で名前を告げ、瞳を球に翳す。音声と虹彩。これが署名となる。

ネズミは親指を立てた。
『オッケー!スオウ組にもサインをさせるね。後でまた連絡をするよ!』
ホログラムが消えた。

葛飾区の地下ではソウタとスミレが万歳をしていた。とうとうやったのだ。世界を股にかけたのだ。売り手、買い手と共に署名をさせた。あとはスオウトシキを落とす。いよいよ大詰めだ。

ソウタは宙空に浮かぶイヴを見上げた。
「スオウは拉致出来そうなの?」
『タケルが最後の戦いをしています。それがどう転ぶかに掛かっています』
そう。まだまだ終わらない。

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