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アンドロイド転生480

青海埠頭を出たアオイのバイクはタケル達の車と並走していた。間もなく多くの警察車輌とすれ違った。スオウ達を捕らえるべく埠頭に向かって行く。アオイは振り返りパトカーを見送った。

アオイは顔を戻すと朝日を全身に受けた。夜明けを迎えて嬉しくてならなかった。全て上手くいった。無事に完遂したのだ。タケルは人を殺めなかった。希望の朝とはまさしくこの事だ。

アオイはイヴに通信をした。
『ねぇ!私、やったよ!出来たよ!協力してくれて有難う。あなたのお陰よ』
『いいえ。アオイの信念が実を結んだのです』

アオイの瞳から涙が盛り上がった。
『そんな事ない。皆んなが協力してくれたから出来たの。いくらでも感謝する。ああ。本当に長い長い夜だったね。でも陽は必ず昇るね』

イヴの喜びがアオイに伝わる。
『そうです。時が解決するのです』
『スオウさん達はどうなるのかなぁ…』
『それもまた時を待たなくてはなりませんね』

アオイは眉根を寄せた。
『そう言えば…ミオは大丈夫?何だか凄い傷を負ったみたいだけど…』
『身体を換えなくてはなりません』

イヴは続けた。声に温かみがあった。
『ミオは成人女性の身体を希望しています。彼女の望み通りになるでしょう』
『そうか。それは良かったな』

だが一転してイヴの声が沈む。
『しかし、ウィルスプログラムを植え付けられました。現在沈黙していますがどのように発動するのか分かりません』

アオイの声が切実になった。
『お願いね?絶対に助けてあげてね?』
『アオイ。あなたの心は本当に優しいですね』
『え!』

イヴの声に不快さが滲む。
『人間の心は複雑です。優しい反面、利己的や自己満足、欺瞞、我儘、臆病、妬み、嫉み、恨み、悪意に顕示欲。本当に様々です』

アオイは頷く。
『そうね。それこそが人間らしさかも』
『アオイにもそんな一面も百面もありますが、概ね優しさに溢れています』

アオイは苦笑した。
『それって褒めてるの?貶してるの?』
『事実を申し上げたまでです。きっとあなたはその優しさが今後も強みになるでしょう』

イヴは続けた。
『私は人間の心を持ったアンドロイドのあなたと出会えて幸せです』
『有難う。生まれ変わって…良かったかな?』
アオイは輪廻転生して初めてそう思えた。

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