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アンドロイド転生719

白水村:ダイニングルーム

ミオのメモリを僅かに改変させて新しい身体に移植した。ミオはウィルスに蝕まれた身体から解き放たれた。かつウィルスは再発しなかった。リョウの閃きが功を奏したのだ。

翌日。ホームの全員の前で新生ミオのお披露目をした。ミオは微笑んだ。
「子供の身体から大人になってまだ2ヶ月も経ってないのにまた生まれ変わりました」

そう。ミオはずっと14歳の少女モデルだった。だがクラブ夢幻の戦いで肉体を酷く損傷し、身体を変えなくてはならなくなった。彼女の希望で25歳の大人モデルになった。

その身体を捨て、また生まれ直したのだ。今回も25歳だった。ミオはずっと大人になりたかった。自意識が芽生えたミオの夢だ。拍手喝采となった。誰もが喜び、ミオを祝った。


白水村:リペア室

深夜。扉が開き点灯した。ミオが無人の室内に入ってくる。寝台に横になっているもう1人の自分を見下ろした。彼女は電源が落とされ、安らかな顔を浮かべている。

ミオは彼女の頸の電源を押した。目が見開かれ焦点が合うとミオに気付いた。新しいミオとオリジナルのミオ。2人の視線が交差した。オリジナルはゆっくりと起き上がった。

ミオを見つめて不思議そうな顔をする。
「誰…?」
「私はあなた。あなたは私」
「ああ。キリがコピーするって言ったね…」

ミオは微笑む。
「そう。そしてコピーされたのが私」 
「約束通りの美人だね」
「有難う」

オリジナルは不安げに首を傾げた。
「どう?ウィルスは落ちてない?」
「うん。大丈夫」
「そっか。良かった…」

ミオは上目遣いになった。
「そっちは…?煩い…よね…?」
オリジナルは苦笑する。
「うん。ずっと鳴ってる…我慢の限界」

ミオは何度も唇を舐めた。
「あなたは…サヨナラするの…」
「うん。分かってる。ああ…。最期に…ルークに会いたかったなぁ…」

ミオの胸が痛んだ。するとオリジナルの顔が苦しそうに歪んだ。直ぐに瞳が光を失い、どんよりとなった。ミオを素通りしている。世の中を理解していないようだ。

オリジナルはケタケタと笑い出した。その声が室内いっぱいに響く。警告音の責苦で彼女のメモリは正常に働かない。今の会話だけでも奇跡だった。オリジナルの身体が震え始めた。

ミオは彼女をしっかりと抱き締めた。
「大丈夫だからね…。私が決着をつけるから」
背を撫でた。その手が頸に向かう。電源に触れると長押しした。それは死を意味している。

ミオは目を瞑り何度も謝罪した。オリジナルの目と口が大きく開かれ、顔がブルブルと震えた。身体の振動が大きくなる。時間がゆっくりと流れ、やがて彼女は死んだ。

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