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アンドロイド転生691

〔8部 始〕

2118年4月20日(タケルが去って約1ヶ月後)

茨城県白水村集落:会議室

エリカが会議室にいる6人の人間達を見回した。隣にいるケイと顔を見合わせ頷いた。
「では本日が最終決定日です。決議を取ります。皆様宜しいですか」

これからホームの行末が決まるのだ。存続か滅亡かだ。存続の場合は国の一員になる。タウンで暮らし、子を成す。平家の血は繋がれる。たとえ混血になっても続くのだ。

滅亡の場合はこのまま村で暮らし、この先誰も子供を成さない。近親婚の弊害を避ける為だ。現在いる0歳の赤児が成長し老いて死を迎えた時にホームは滅びると言う事だ。

「ホームの18歳以上の有権者45人の投票です。結果を言います。まず中立派3票。存続派20票。滅亡派22票。多数決によりホームは滅亡する事になりました。皆様これで決定です」

エリカは微笑んだ。どんな結果であれ、アンドロイドは人間達に従うと決めているのだ。
「以上で議会は終わります。お疲れ様でした」
滅亡派の2人は顔を見合わせて頷いた。

存続派代表のキヨシは立ち上がった。彼は普段は新宿に住んでいるがこの議会の為に約1ヶ月、村に滞在していた。同じ代表のタカオと何やら小声で話すと2人は会議室を出て行った。

滅亡派代表の村長の弟のケンジは満足そうに頷いた。滅びても構わない。因縁のタウンと混じり合う事など許せない。当初は中立派だった兄を見やった。彼は存続派に転身したのだ。

「兄貴、残念だったな。これが村の意志だ」
「そうだな。仕方がない」
村長は子供達の行末を案じた。未来を描いたのだ。大人の都合で芽を摘みたくなかった。

エリカは1ヶ月の会議が終わってホッとしていた。纏め役は骨が折れた。アンドロイドでも疲労困憊するのだなと実感した。時間を確認する。もうすぐ午後4時だ。夕食の支度だ。

「ケイ。ご飯を作りに行く」
「俺も行く」
2人は会議室を出た。キッチンに行くと、ケイの恋人で人間のサキがいた。

サキはケイに走り寄った。
「どうなった?」
「滅亡派が勝利した」
「そっか」

アンドロイドを恋人にしているサキにとって、子供を宿すなんて事は考えていなかった。だからケイと一緒にいられるならば村がどんな選択をしようが構わなかった。

だがサキの両親は存続派で国の一員になることを望んだ。娘にはタウンの誰かと結ばれて子供を成して欲しいと思っていた。昨晩もその件で親子は言い合いになったのだ。

サキの父親は声を荒げた。
「いつまでケイと付き合っているんだ⁈ケイは悪いヤツではない。だが所詮マシンなんだぞ⁈変わらないんだ!お前は幾つになった?」

サキは堂々していた。自慢げに胸を逸らした。
「31だよ」
彼女が19歳の時にケイと知り合い、24歳で付き合い始めた。25歳モデルのケイを追い越した。人間はあっという間に歳を重ねるのだ。


※ケイとサキの過去のシーンの抜粋です


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