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アンドロイド転生1071

2120年9月30日
世田谷区 カナタの部屋にて

カナタの目の前には教師アンドロイドの立体画像。そして彼の隣にはホストファミリーの養母。今日は三者面談だ。カナタは高校3年生。進路について話し合う時期になった。

教師は微笑む。
『カナタ様は優秀です。IQは182です』
そう。彼は優れている。普段の調子の良さと天真爛漫な様子とは結びつかないくらいだ。

養母は目を丸くして身を乗り出した。
「ほ、本当ですか?」
『はい。以前からカナタ様にはお伝え致しております。お母様はご存知なかったのですか』

「ええ…。何も言わなかったもので…」 
『そうですか。進学は東京大学にしますか?』
「まぁ…!東大!素敵ですわね」
『カナタ様なら合格間違いありません』

カナタはうーんと言って宙を見つめた。
「俺…外国に行ってみたい。イギリスが楽しかったし、色んな世界を見てみたい」
『では…アメリカは如何ですか?』

「アメリカだと…どんな大学があんの?」
『ボストン近郊にハーバード大学があります。偏差値80。合格率3.2%です。世界でも評価が高く優秀な人材が数多く輩出されています』

カナタは渋い顔をする。
「えー。そんなところ…俺…無理だよ」
『いいえ。カナタ様なら確実に合格するでしょう。あなたは偏差値90に相当します』

「え?マジ?俺ってそうなの?」
『はい。以前からお伝えしています』
彼は自分のIQや偏差値など無頓着だった。だが確かに授業は簡単だし試験は毎回首位独占だ。

『カナタ様。ハーバードの受験資格を得る為には課外活動をすること。面接を受けることです』
「課外活動って?」
『ボランティアです。社会貢献ですね』

養母は益々身を乗り出した。
「この子は動物の保護活動をしています!それと犬を連れて病院や施設を訪問しているんです!」
『それは良いことですね』

教師は養母をジッと見つめた。
『カナタ様は頭脳明晰ですが、それだけではなく社交性、協調性、傾聴力、共感力などに優れています。他者と円滑に図れるスキルがあります』

養母は何度も頷いて笑った。実感しているのだ。
「ええ。そう思います。本当に良い子なんです」
カナタは照れ臭そうな顔をした。
「で、でさ…他に何をすれば良いの?」

『英語の試験。エッセイの提出。成績表の提出です。出願時期は11月〜12月末です』
「分かった。あのさ?大学に受かってから自分のやりたい事を見つけてもいいんだろ?」

教師はニッコリとする。
『勿論です。大学では世界各国の若者が勉学に励んでいます。あなたは多種多様な民族と触れ合う事で更に成長し未来が見えてくるでしょう』

三者面談が終わり教師の立体画像が消えた。養母は繁々とカナタを見つめた。
「あなたが成績が良いの知ってたけど…そこまで優秀だなんて思わなかったわ…」

「でもさぁ。勉強よりも大事なコトって沢山あるよな?俺はいつもそう思うんだ」
「本当ね。あなたはそれを体現している。明るくて優しくて自慢の息子よ」

養母はカナタの部屋から出て行こうとして立ち止まり振り返って少し寂しそうな顔をした。
「息子はウィーンだし…あなたはアメリカね…」
そう。実の息子は国立音楽大学で学んでいる。

「夏休みとか冬休みがあるじゃん?帰ってくるよ。マミーとダディとシェリーに会いに」
養母の顔がパッと華やぐ。そんな風にサラリと気遣えるカナタはやはり共感力が高いのだ。


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