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アンドロイド転生479

新宿区:平家カフェ

ナニーのメグはソラを優しくゆすった。
「起きて下さい。家に帰りますよ」
ソラは微動だにしない。眠りが深いようだ。何度かゆすってソラは漸く目を開けた。

メグはソラの身体を抱き起こした。
「ううん…。メグ、なに?」
「家に帰るんです」
「家…?うーん…」

リツが笑った。
「俺がおぶるよ。メグ、背中に乗せてくれ」
メグは軽々とソラを抱き上げた。
「私がおぶった方が早いかもしれません」

リツの母親のマユミが微笑んだ。
「あなたはこれを持って。お土産よ」
色とりどりのケーキを詰めたパッケージをメグに渡す。メグは頭を下げた。

チアキはメグとマユミの間に手を差し出した。
「ダメです。ケーキは証拠になります。ソラには此処での出来事は夢だと思ってもらうの」
マユミは残念そうにケーキを受け取った。

チアキがメグを見つめた。
「悪いけれど、あなたの記憶を消すね。30分後に発動される。家に着いた頃には私達の事は忘れている。ソラから聞かれても何も分からない」

メグが頷いた。
「私のメモリを精査しても潜伏先が暴かれないようにする為ですね?」
「そう。カフェを守る為。ホームを守る為」

メグは小首を傾けた。
「ホーム?」
「そう。私達の家なの。人間とマシンが共存する村。上も下もない新しい世界」

メグは微笑んだ。
「素晴らしいですね」
「あなたはあと2年経てばナニーから卒業する。廃棄になるかも…。それが嫌だったら逃げて」

チアキは真剣な眼差しだった。
「縁があれば、私達が救う。家族になる」
メグは嬉しそうに目を細めた。
「家族ですか。まるで人間みたいです」

リツが2人の間に入った。
「車が来たようだ。行くぞ」
全員が階下に降りて行った。車にソラとメグが乗り込んだ。ソラは目覚める事はなかった。

マユミがソラの頬を撫でた。
「また来てねって言いたいのに…残念ね」
そう。ソラには2度と会えない。互いの気持ちはどうあれ、拉致した側とされた側なのだ。

「優しくして下さって有難う御座いました」
リツの父親のキヨシが手を上げた。
「元気でな!」
車が発進し、リツ達は手を振って見送った。

25分後。スオウソラの住まいに到着した。メグはソラをベッドに運び、彼に向かって囁いた。
「大冒険でしたね。良い夢を見て下さい」
その5分後。メグはアオイ達の記憶を失った。

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