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アンドロイド転生631

2118年3月20日 AM9:40
茨城県内:メディカルセンター

ルイの両親のタカオとキリが病院に到着し、モネの母親のサクラコと対面した。
「ドウガミです。この度はとんだ事に…」
「タカミザワです。初めまして」
ルイは黙って大人達を見つめていた。

タケルはその場から立ち去った。自分の役割は後はアオイを麓に迎えに行き病院に連れて行くだけ。それだけだ。仲間のエイトに通信をして彼は中庭にいる事が分かった。俺もそこに行こう。

医師アンドロイドがサクラコの前にやって来た。
「10時からオペです」
ICUの扉が開いた。自走式のベッドと共にナースアンドロイドがいた。モネが横になっている。  

サクラコが娘に走り寄った。
「大丈夫?辛いところはない?」 
顔色は昨晩よりも改善していた。
「うん。大丈夫」

モネはルイの父親のタカオに気がついた。彼とは面識があった。
「あ。ルイのお父さん」
タカオは黙って頷いた。

モネはルイの母親のキリに目礼をした。
「タカミザワモネです。17歳です。ルイ君とお付き合いしています。宜しくお願い致します」
キリも頭を下げた。

モネはキリをひたと見つめた。
「私が勝手にここに来て勝手に転んで怪我したんです。ルイ君は悪くありません。どうか、ルイ君を怒らないで下さい」

キリはモネの丁寧な挨拶と他人に転化しない芯の強さに感心しつつ、気まずそうな顔をした。
「それでも…ルイに会いに来たから…モネさんはこんな事になってしまった。ごめんなさい」

モネは何度も手を振った。
「謝らないで下さい。私の我儘だったんです。でもルイ君が来てくれた。助けてくれたんです。嬉しかったです」

キリはチラリと息子を見た。本当に良かった。モネを助けたのだ。心から安堵した。医師が頷くとナースも頷いた。
「ではオペ室に運びます。時間は30分です」

全員がオペ室の前まで見送った。直前までモネとルイは手を握っていた。
「頑張れよ」
「大丈夫。じゃあね。後でね」

扉がスライドし、オペ室にモネは消えていき全員が息を吐いた。緊張していた。待合室に移動して、其々が椅子に腰掛けた。モネを笑顔で見送ったルイの顔が暗かった。

ルイは俯きながらチラリと両親を盗み見る。あんた達も俺らの付き合いが反対なんだろ?いいんだよ。どうせそのうち別れるんだから。モネのお母さんと約束したし…。

タカオとキリ。サクラコは何も話をしなかった。今はモネのオペに集中すべきだという暗黙の了解があった。ただ待つだけだ。両者にはピンと糸が張ったような緊張感があった。


※モネとタカオが出会ったシーンです


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