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アンドロイド転生958

2119年3月11日 夜
都内某所:公園

「何があっても味方になる」
シオンはトウマの言葉で胸がいっぱいになる。その真摯な眼差しに心が震えた。シオンは決意した。大丈夫だ。トウマは分かってくれる。

シオンは深呼吸をして何度も唇を舐めた。
「ぼ、僕は…お、男の人が…す、好きで…。子供の頃からずっと…」
「うん。そうか」

シオンはトウマをチラリと見た。彼の顔付きも物言いにも嫌悪が感じられない。柔軟に受け止めているようだ。シオンは勇気付けられた。よし。言うぞ。こうなったら言うぞ。

「そ、それで…あ、あなたを初めて…見た時…。ぼ、ぼ、僕の…理想だと…」
「え…?」
「あ、あなたが…好きなんです!ずっと!」

シオンの叫んだ言葉が大気に溶けた。そして静寂に包まれた。言った。とうとう言った…!心臓が早鐘のように鳴っていた。緊張しつつ、なんだか気持ちが楽になった。

シオンは悔しそうに下唇を噛んだ。
「それが…ホウジョウカズキにバレて…トウマさんにチクるって脅されたんだ。それが…怖くて…だから…キスしたんだ。キモいでしょ…」

告白した事で心が楽になったのも束の間、カズキに対する怒りとトウマに対する不安に襲われた。一転してシオンの目つきが挑戦的になった。それは嫌われるかもと言う恐れの裏返しなのだ。

「ねぇ?キモいでしょ?嫌いでしょ?男が好きだし!ジジイとキスしたし!ああ!キモい!」
「キモくない!嫌いにならない!」
トウマはいきなりシオンを抱き締めた。

突然のことに息が止まりそうになる。肩の痛みなど忘れ去った。トウマが叫んだ。
「俺も…初めてシオンを見た時から忘れられなかった!俺もお前が好きだ。ずっと好きだった!」

トウマはシオンを抱き締め続けた。
「ごめん。本当にごめん。辛い思いをさせた。もう2度とカズキと会うな!」
シオンはあまりの事に言葉が出て来ない。

シオンはずっと弱者だった。カズキにも。そしてトウマにも。嫌われたくない。それだけだった。一方的な恋心を募らせていると思っていたのにそんな自分が抱き締められている。

シオンはトウマに包まれながら目を丸くする。彼の厚くて強い胸を感じて呆然となっていた。僕を好き?え?初めて会った時から?忘れられなかった?嘘だろう?え?本当に?

やがてハッと気付くとシオンはトウマの胸を押して離れた。そうだ。トウマには彼女がいるんだ。シオンはまじまじと彼を見つめた。
「だ、だって…ヒマリさんが…」

そう。ヒマリとはトウマの恋人で1年以上も付き合っている。部員の前で告白されたらしい。明るくて元気なヒマリと落ち着いたトウマはそれはそれはお似合いのカップルだ。
 
「うん。だよな…。ヒマリってあんな感じだろ?サバサバしてて勝手にマシンガンのように喋って。だから…付き合えるかなって思ったんだ。実際…嫌いじゃないし…俺は女の子らしいのは苦手だから」

それは理解出来る。自分もそうだから。その点は確かにヒマリはサバサバとしている。向日葵のように夏が似合う溌剌として笑顔の可愛い女だ。シオンは大嫌いだったが。


※2人が恋をしたシーンです


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