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アンドロイド転生960

2119年3月11日 夜
ホウジョウカズキの邸宅

タクシーが停まった。トウマは降りると家を見上げた。その瞳には決意が伺える。門で訪問の意を伝えた。執事がにこやかに応対した。
「開門致します。お入り下さいませ」

トウマは門を入る。玄関の扉が開いた。執事に案内されてリビングに足を踏み入れた。カズキと妻のリエがワインを飲んでいた。
「やぁ。トウマ君。こんな時間になんだい?」

トウマはカズキのグラスを奪うと中身をカズキに浴びせかけた。カズキは呆然となったが直ぐに立ち上がった。顔に怒りが現れた。
「何をするんだ…⁈」

トウマはカズキの胸ぐらを掴んだ。
「お前は犯罪者だ」
「何を…言ってんだ…」
「脅迫したな。しかも未成年を」

カズキの表情に焦りの色が見えた。
「書斎で…話をしよう」
「いや。奥さんの前でする」
「ま、待てよ…」

リエは眉間に皺を寄せた。カズキに問うような顔をする。カズキは反撃に転じた。
「おい!トウマ!離せ!不躾じゃないか!」
「どっちが?高校生にキスした男が?」

トウマはカズキの胸ぐらを両手で掴んで何度もカズキの身体を揺すった。
「どんなに相手が苦しんだか!想像してみろ!」
「な、何の事だ…」

リエは腕を組んだ。冷ややかな目だ。夫の様子は明らかにおかしい。まさか疾しい事をしたのか。
「あなた?どう言うこと?女子高生にそんな事をしたの?本当に?」

「リエさん。違います。男子高生です」
リエは目を丸くした。
「あなた!ホントなの?」
「そ、そんなわけないだろう…」

トウマはリエを見つめた。
「10回以上もしたそうですよ。嫌がるのを無理やり。何度も。脅して」
「黙れ!」

リエもトウマを見返した。
「誰にしたの?」
「シラトリさんの義理の息子のシオンです」
「え⁈」

リエは驚愕して口に手を当てた。シラトリ家は名士だ。ホウジョウ家など容易く社会から葬れる。リエは間髪を入れずに夫を見やって睨みつけた。カズキは妻の視線を感じて目を泳がせる。

「あ…アイツが誘ったんだ!」
「誘った?よく言うよ。シオンは死にたいと言ったんだぞ!ふざけるな!」
「ふん!喜んでいたぞ!」

トウマはカズキの胸ぐらをきつく締め上げた。怒りで顔が真っ赤だ。カズキも顔を赤くして苦しそうに顔を歪めた。トウマはカズキを突き飛ばした。カズキは転がってソファに肩を打ちつけた。

トウマは息を荒げる。
「いいか!2度とシオンの前に現れるな!もし何かしたら許さないぞ!」
怒りで拳がワナワナと震えた。

リエは立ち上がると心から嫌悪するように夫を見下ろした。そしてトウマの拳にそっと触れた。
「もう帰って。後は私が話をするから。ね?トウマさん。ちゃんとするから」

カズキの瞳に怯えが見えた。どうやらリエに頭が上がらないらしい。カズキは弱い者には強く、強い者には弱いのだ。呆れるばかりだ。トウマは頷くとリエに頭を下げてホウジョウ家を後にした。


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