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アンドロイド転生301

カノミドウ邸 シュウの寝室

シュウは目を開いた。白い天井が見えた。辺りを見回す。ここは?寝室か…?僕は…どうしたんだ?鼻に酸素チューブが挿入されており、腕を動かすと圧痛を感じた。点滴の針が刺さっていた。

ああ。処置をしたのか。ここ最近、発作を起こすとベッドで目覚め、点滴が刺さっている事が多い。少し胸元が苦しかった。横になっているのに息が切れる。身体は熱いのに背筋に悪寒が走る。

ドクターアンドロイドがやってきた。
「ご気分は如何ですか?」
「少し…苦しいな」
「ではもう少しお薬を足しましょう」

点滴に薬液が注入されるの眺めた。
「僕は…倒れたんだね?」
「はい。昨日です」
「そうか…」

ナースアンドロイドがドクターを見上げた。
「旦那様はお水を欲しがっております」
「点滴をしているから大丈夫ですが喉を潤したいのでしょう。ゆっくりと飲ませて下さい」

ナースは頷くとシュウの口元にスポイトを当てた。水が喉の熱感に気持ちが良かった。有難うと言ってシュウは目を閉じた。ああ。夢を見ていた。アオイが笑っていた。綺麗だったな。

アンドロイドの姿ではなく、生前のアオイだった。彼女が出てくるなんてもう長い事なかった。結婚式と言ってたな。せめて夢でも式を挙げるところまで見たかったな。

曽孫のトウマが部屋に飛び込んできた。
「祖父ちゃん!大丈夫か?」
「…ああ。大丈夫だ」 
本当は今ひとつだが心配させたくなかった。

ドクターアンドロイドが胸を反らした。
「旦那様の体温は38.2℃。酸素濃度は93%です。血圧145、82。心拍数128。胸苦があるので点滴にお薬を足します。お話は30秒以内にして下さい」

トウマは頷くと早口になった。
「父さん達と話していたら倒れたんだ。あの事はタクミ祖父ちゃんが処理するって言ってる。父さんはサヤカの事を調べるって言ってる」

あの事とはダイヤモンドと銃の事だ。孫のタカヤが会社の経常利益を偽り、手に入れたものだ。息子達は公にせず内密に処理をしようとしている。全く呆れるばかりだ。

サヤカの事とはアンドロイドに強奪の指示命令をしている先を調査しようとしている。どちらもシュウの意に反する。溜息をついた。
「やめてくれ…私はそれを…望んで…ない…」

「シュウ祖父ちゃんはゆっくり休んでろな。ちゃんとするからさ。心配するな。な?」
トウマはドクターに頷いた。話は済んだと言わんばかりだ。ドクターも自信ありげに頷いた。

シュウは慌てた。何を終わりにしている?
「待って…くれ」
「祖父ちゃん、大丈夫だからな!」
何が大丈夫なんだ?

処理だ調査だなんてやめてくれ。シュウはトウマに手を伸ばしたが、その動きは力が弱かった。歳を取ると言うのは他人から戦力と見做されない事なのだなと実感する。トウマはさっさと出て行った。

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