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アンドロイド転生388

中国福建省:ワン・イーチェンの邸宅

中国マフィア、蛇頭のワン兄弟。兄のイーチェン。弟のハオランと2人の客が雀卓を囲んで宙空に浮かぶホログラムのイヴを見上げていた。麻雀よりも面白そうな話に少しは興味を持ったようだ。

時刻は夜の11時過ぎ。イヴは先ずイーチェンのAIを手中に収め、次にスオウトシキのAIだと語ってワン兄弟と面会を取り付けた。あとはこちらの提案に乗ってくれれば言う事はない。

イヴにとって運が良かったのは兄のイーチェンの邸宅にアクセスをしたところ弟のハオランも座を共にしていた事だった。2人まとめて話が出来るのは好都合だ。これは幸先が良い。

イヴは微笑んだ。
『御面会して下さり有難う御座います。お楽しみのところを失礼を致します』
弟はニヤリとした。
「ああ。こんな時間に何の用だ?良い話じゃねぇと納得しねぇぞ」

兄のイーチェンも薄ら笑った。
「戦争でも始まるんか?」
『戦争が始まるなら爆弾が必要ですね。如何ですか?お買いになりませんか?』

ハオランは目を輝かせた。
「あ?スオウ組が爆弾を売るんか?」
『いいえ。仲介者になります』
「そうだよな」

ハオランは小馬鹿にしたように笑った。
「平和ボケの日本が爆弾なんて売るわけねぇな。ビビリの国だ。扱い方も知らんだろう」
『はい』

イーチェンは眉間を吊り上げた。
「なんだ?話ってそれか?」
『はい。その通りです。大変良い案件です』
「面倒くせぇな」

イーチェンは老酒を一気に飲んで雀卓に打ちつけた。こんな時間に突然何かと思えば爆弾を買えだと?夜中に何を言ってる。いくらスオウ組と親しくしていても礼儀がある。

イーチェンは煩わしくなってきた。チラリと雀卓を見た。今夜の俺は幸運の女神がついている。さっきは大事な局面だった。今すぐに麻雀を再開して勝機を掴みたい。

彼はイヴを見据えた。
「俺達は忙しい。明日の昼にでもしてくれ」
ハオランは笑った。
「今日の兄貴はツイてるからな!」

確かに突然、しかも真夜中に爆弾取引の話は面食らうだろう。だが好機は勝機だ。タイミングマネジメントではなかろうか。彼らにとっても悪い話ではない。最適な方法を選択して欲しい。

イヴは雀卓を囲む男達を見下ろす。兄のイーチェンにとっての勝機はどうやら今は麻雀のようだ。彼の気持ちはよそにある。どうやって頑なな心を解かすか。イヴの腕の見せ所である。

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