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アンドロイド転生399

新宿区歌舞伎:クラブ夢幻

ホールでは攻防が続けられていた。ミオが相手にする女性アンドロイドはレイラという名で背が高く筋骨隆々の体躯だ。14歳モデルのミオなど、大人と子供の対戦だった。

しかもレイラはファイトクラブ仕様のマシン。その攻撃には容赦がなかった。ミオは胸や腹を連打されて蹲っていた。だが激しく蹴られながらも周囲を見回していた。何か打開策を考えなくては!

ふと目についた。バーコーナー!あそこに逃げ込めれば…!そして太腿に装着されているテイザー銃を撃つのだ。スタンガンの強力版はアンドロイドのCPUを焼く。機能停止になるのだ。

レイラが勝利を確信したようにニヤリと笑い、拳を天高く上げ、大きく身体を弾ませた。ミオの額を狙うつもりだ。人間同様、頭蓋は急所だ。レイラは間髪入れずに凄まじい勢いで振り下ろした。

ミオの顔面に拳がめり込んだ。既の所で避け額は免れたものの鼻と頬が激しく陥没した。その衝撃にミオの眼前に火花が散った。赤い油が飛沫となった。レイラは再度腕を振り上げた。

だがミオはその一瞬を見定め、素早く反転し危機一髪で逃れた。強烈な破壊音が響き、レイラの拳が床にめり込んだ。腕をまた振り上げようとしたが床に挟まって抜けなくなった。

その隙にミオは転がって勢い良く立ち上がり、バーコーナーに向けて飛び上がるように走った。小柄な身体がカウンターを越えた。脚に何本もの酒のボトルが当たって粉々に砕けた。

ミオはカウンターの下に落ち、強かに背中を打ったが、直ぐに起き上がった。顔からは鼻血のように赤い油が溢れ出る。負傷箇所は大きい。でもひとまず逃げきれたのだ。ほっとする。

よし!テイザー銃だ!抜け!今すぐ!だが太腿に装着していた銃がない!辺りを見回す。ない!立ち上がり、カウンターを見る。ない!どこ?どこなの?気持ちが焦る。慌ててホールを見渡した。

仲間達が其々格闘している。レイラも床と格闘していた。腕が深くめり込み抜けないでいる。銃はどこ?どこなの⁈ミオは発見する。レイラの近くに落ちていた。容赦のない攻撃で外れたに違いない。

今なら取りに行ける?ミオは迷う。カウンターからレイラの様子を見た。まだ腕が抜けない。決意する。よし!今だ!行け!カウンター乗り越えようとしたが自分の顔の油で足が滑った。

レイラは顔を歪ませ、足を床に踏ん張るとグイグイと腕を引っ張った。漸く抜け、勢い良く振り上げた。床に内臓の重低音のスピーカーの器具やコードがレイラの腕に絡みついてた。

コードをそのままにレイラはミオが逃げたバーコーナーを振り返った。足が滑ったミオはまたカウンターの下に落ちた。陰に隠れたのだろうと予測してレイラは嘲笑うと猛然と走り出した。

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