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アンドロイド転生494

ホームの人々は近親婚を繰り返してきた。深刻な弊害を齎す日も近い。彼らは危機的状況をよく理解していた。にも関わらず、政府からの再三の国民になれと言う打診を拒否していた。

集落の大半は滅ぶならそれでも良いと覚悟をしている。だが国民になろうと言う少数派もいる。そうなれば婚姻も、生殖遺伝子バンクも利用する事も可能だ。ホームは存続出来るのだ。

ルイの母親のキリは村長の娘としてホームを守る義務と責任がある。だが…彼女の心境はタウンと共存したくないと思っている。しかしこのままではホームの未来を失ってしまう。

息子の恋路を反対しつつも、流れのままで良いのではないかと言う思いもある。相反する気持ちの親達の葛藤を見透かしたエリカはこっそりとモネとの仲を取り持った。

これまで3回ほどルイを内密で東京に連れていき、2人を逢わせた。エリカはルイ達から絶大な信頼を得ている。だが親達に知れたら非難されるだろう。これは絶対に感づかれてはならない。

それなのに、あろう事かルイは友人のカナタとヤマトを東京に連れて行くと言い出した。少年の好奇心と愚かさと大胆な発言である。人数が増えればそれだけ危険は増すというのに。
 
ルイは上目遣いになった。
「な?大丈夫だよ。な?」
エリカはルイの言葉に顔を顰めた。
「う〜ん…」

ルイは軽く頬を膨らませる。
「タウンと喧嘩してるのは大人だろ?俺達が巻き込まれてイイ筈ないだろ?」
「まぁ、そうだけど」  

「別に悪い事をしてるわけじゃないじゃん」 
3日前に新宿歌舞伎町のクラブ夢幻の事故が大々的にニュースになった。客の若者達はドラッグを常用していたと暴かれた。

ルイにしてみれば、モネとの恋愛は清純だ。煙草も酒もドラッグもなし。ショッピングモールや公園をデートする程度だ。こんなクリーンな付き合いはないと言う自信がある。キスはしたけど。

ルイはスッカリいい気になっていた。
「じゃあ、カナタ達に言ってくる。ヤツら喜ぶぜ〜。あ!そうだ。モネの誕生日プレゼントは何がイイと思う?エリカ、選んでくれよな」

エリカは呆れた。
「プレゼントってお金が必要なんだよ?」
「俺、持ってないもん。エリカ宜しくな」
「デートの度に私が出してるじゃん」

ホームでは携帯電話が必要がないようにペイも不要だ。そもそもホームの人間が集落を出る事はないのだ。ルイの父親のタカオと叔父のアキラがバイヤーとして新宿に出向くだけだった。

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