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アンドロイド転生944
2118年12月24日 夜
茨城県白水村集落
広いダイニングルームは華やかにクリスマスの飾り付けがなされていた。村民全員が集まって賑やかに飲食を楽しんでいた。外は雪がしんしんと降っているが室内は暑いくらいだ。
キリは嬉しそうに瞳をくるりと回した。
「ルイはデートだって」
「え?遭難した子と復活したの?」
「違う。別の子だって。まだ友達だけど…」
女性達は喜んだ。ルイとモネが別れた事を知っているのだ。若さとは、再び浮上する力がある。ルイはこれからまた出会いと別れを繰り返して大人になっていくのだ。
カナタの父親が苦笑する。
「うちの倅はパーティで余興をやると言ってたぞ。あいつはグイグイ行くからなぁ。サイトウさんに迷惑をかけないと良いんだが…」
カナタの父親はいつでも心配性だ。カナタの無邪気さが彼の持ち味であるのだが、父親は思慮深さに欠けていると思うのだ。だが実際のところ明るくて素直な息子が自慢なのだ。
シオンの母親が幸せそうに微笑んだ。
「うちもパーティよ。シラトリさんは賑やかなのが好きなんですって。シオンも上手く立ち回っているみたい。大変だけど楽しいって」
いや。シオンはたった今苦悩の真っ最中だ。まさか彼にとんでもないことが起きたなんて想像もしていない。大事な我が子が性の被害に遭ったと知ったら母親は気絶してしまうだろう。
6人の親達は息子の事を案じつつも嬉しいのだ。国民として初めての年末を楽しんでいると喜んでいた。離れてお祝いするのは少しは寂しいけれど、子供が幸せならばそれで満足なのだ。
タカオは苦笑いをした。
「リョウもデートするそうだ。まさかなぁ…こんな展開になるなんて思いもしなかったなぁ」
5人も笑った。本当に。あのリョウが。
※時差の関係上リョウは数時間後に祝います
「ずっとイギリスにいるつもりかしらね?」
「じゃない?彼女がいるんだもん。帰りたくないでしょ。どうせ帰って来たってオタクよ」
「ボサボサでボーボーでヨレヨレだったのに!」
本当に人は変われば変わるものだ。身なりに構わず、人と滅多に交流せず、朝から晩までコンピュータだった。しかも昼夜逆転で正午に朝食だった。注意しても聞きはしなかった。
リョウの父親のケンジがやって来た。
「なんだ?リョウの話か」
「そうそう!大逆転ホームランだ」
「まぁな」
ケンジは時折リョウと電話をしていた。いつもこざっぱりとしており、見違えるほどにイイ男になっていた。なんだ?うちの倅もなかなかやるじゃないか?と嬉しくなったものだ。
ケンジがふと気付いて男女を呼んだ。サキの両親だ。2人は笑みを浮かべてやって来る。大ホームランと言えばサキもそうだ。今や時の人だ。シーグラスの成功でテレビ出演だ。
タカオが腕を組んで真面目な顔をした。
「こう考えると街に行った奴らはみんな成功だ」
そう。国民になった親戚達(ルイ達以外17人)も其々の場所で輝いているのだ。
キリはニンマリとした。
「そうだね。こうやって平家の血が細々とでも繋がればそれで良いね。ね?叔父さん?」
ケンジに皆が注目する。
ケンジは平家の誇りだと言って滅亡派の代表だったのだ。その息子のリョウがイギリスに旅立ってしまった。ケンジは気まずい顔をしたが目線を宙に向けて素知らぬ振りをする。皆が笑った。
※リョウが両親にイギリスへ行くと宣言するシーンです
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