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アンドロイド転生519

銀座:ホテルペニンシュラ

リツが警察に連行されたと同時にアンドロイドのゲンと、人間のヒカリは水着にガウン姿でホテル内の会議室で刑事から事情聴取を受けていた。ヒカリはわざとらしく不服そうな顔をしている。

「あなたのお名前は?職業は?お住まいは?」
「オクザワヒカリです。画家です。恵比寿に住んでいます。こちらはゲンです」
「事件の経緯を教えて下さい」

ヒカリは口をへの字に曲げた。
「プールにあの人がやって来たんです。命令をしたり怒ったり凄い剣幕でした。ね?ゲン?」
ゲンは頷いた。ヒカリと手を繋いでいる。

刑事はゲンを見た。
「君はこの女性の執事なのか?」
ヒカリが割って入った。
「恋人よ。問題ないでしょ?」

刑事は頷いた。世間ではアンドロイドを恋愛対象にする若者が増えている。それをとやかく言う権利はない。個々のアイデンティティは尊重するものだ。時代は流動的なのだ。

刑事の瞳が閃いたと言わんばかりに光った。
「オクザワヒカリさん。被疑者とは知り合いですか?元恋人とか?それで…あなた方を恨んでやって来たとか?違いますか?」

ヒカリは目を剥いた。
「元カレなんかじゃない!全然知らない人!ゲンだって知らないわよね?あんな変な人!」
ゲンも困ったように頷く。

実際のところゲンもヒカリも知っている。ゲンの復讐によって彼の仲間が困難な状況におり、それを止める手立てが欲しくて尋ねた事は百も承知だ。だが面倒な話しはしたくなかった。

刑事は首を傾げた
「では被疑者は何故あなた方を尋ねたんですか?何故命令したり怒ったりしたのでしょう?」
「さぁ…?分かんない」

ゲンが引き取って続けた。
「彼は1人で憤っており、話の脈絡もおかしくて何を言ってるかは理解が出来ませんでした」
刑事は難しい顔をして頷いた。

ヒカリの鼻息が荒くなった。
「最初にゲンの事を突き飛ばそうとしたの!彼が避けたら、勝手に転んで…凄い剣幕で怒ってました!頭がおかしいんじゃない?」

ヒカリはゲンと手を繋ぎながら振り回す。
「でも私は人間同士で和解に持っていこうとしたの。そしたらいきなり突き飛ばしたの…!怖かった!とっても…!」

刑事は何度も頷いて息を吸い込んだ。
「オクザワヒカリさん。あなたは今回の一件について被害届を出しますか?」
ヒカリは眉根を寄せて小首を傾けた。

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