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アンドロイド転生997

2119年10月1日 正午
イギリス:ロンドン カフェにて

ルイは修学旅行でイギリスにやって来た。親戚のリョウとカフェで待ち合わせする。やって来たリョウはまるで別人だった。髪はさっぱりと整えられて服装も清潔感に溢れている。

ルイは正面に座るリョウを繁々と見つめた。
「別人だ。そんなに変わるもんなんだ…」
「ルイこそ。なんだかガキっぽくなくなったぞ。背も伸びたし…変わったな」

互いが互いの変化に驚いていた。人は住む場所や生き方が変わると知らぬうちに大きく成長するものなのだ。早速と言ってリョウは街を案内してくれた。颯爽と街を歩く。ルイは驚くばかり。

そして若者が喜びそうな店に連れて行く。更に見識を深めるべきだと言って文化施設にも訪れた。リョウはイギリスで暮らして1年が過ぎすっかり街の住人になっているようだ。

昨年の彼はどこを歩いても右往左往していた。オロオロしたり、呆然となっていた。そして詐欺に遭い金銭を奪われるところだった。しかし今ではそんな街がホームタウンになったのだ。

夕方になりカフェで休憩する事になった。給仕アンドロイドが出迎える。リョウは英語でスラスラと応えた。澱みなく話せる程に上達したのだ。やがてリョウにミアからコールが入る。

「ミアが会いたいって。夜まで大丈夫か?」
「うん。先生に許可を取ってある」
「よし。旨い店に連れていく」
ミアに連れられて初めて訪れた場所だ。

レストランに行くと、ミアは既に待っていた。ルイを見ると満面の笑みを浮かべた。
「Hi!会いたかった!」
ルイはミアの美しさに驚いて頬を染めた。

3人は料理を堪能した。ルイは瞳を輝かせる。
「マジで旨い!ローストビーフは最高だ!」
リョウもミアも目を細めた。
「ガンガン食え。どんどん食え」

やがてルイははち切れんばかりだと声を漏らし腹を抱えて息を吐いた。食後のコーヒーが運ばれると漸く2人の様子をじっくりと観察する事が出来た。当然だがまるで恋人同士だった。

2人の眼差しは慈しみと愛があった。言葉ひとつをとっても互いに思い遣っている様子が伺える。ルイは小首を振って感心する。あのリョウ兄ちゃんが…と思う。村の全員に見せたかった。

ルイはひとり頷いて笑った。これじゃあ…ホームになんて帰りたくないよな。それにここにいた方が良い。村にいたら…何の喜びもなくジジイになるだけだ。兄ちゃん。やったな。おめでとう。

「何笑ってんだ?」
「美女と野獣だ」
「はいはい。分かってるよ」
そんな余裕の笑顔が爽やかだ。

「学校はどうだ?」
「ボチボチだよ」
「仕事はどう?」
「ボチボチだな」

ルイは身を乗り出した。
「リョウ兄ちゃんは何の仕事をしてんの?」
「マッチングアプリの運営だ」
「へぇ…」

「ルイの将来の夢は何だ?」
「んー。研究者になりたい。キノコの」
「ああ。お前はキノコ博士だからな」
「うん」

ルイは子供の頃からキノコに興味があった。4000種類もあるが殆ど網羅している。キノコは栄養価が高く免疫力を高めるのだがルイは研究をして更に効能を見つけたかった。

9時になるとお開きになった。リョウとミアはホテルまで送ってくれた。ルイは頭を下げる。
「ご馳走様でした」
2人は手を繋ぐと笑顔で去って行った。


※リョウとミアが出会ったシーンです


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