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アンドロイド転生628

茨城県白水村の集落:キッチン

タケルからリョウヘ連絡があり、アオイを目覚めさせるのはいつだと問われた。リョウは慌ててキッチンに向かった。エリカを探す為だ。9時過ぎだ。後片付けをしているだろう。

キッチンを覗くと人間達とアンドロイドが忙しなく動いている。リョウは洗い物をしているエリカの背に近付いて囁いた。
「おい?タケルから連絡が来たぞ」

女性がリョウの背中を叩いた。
「まったく!毎朝毎朝遅いんだから!」
コンピュータオタクで夜型人間のリョウは朝食の席に滅多に参加しない。

リョウは女性を無視した。
「おい!エリカ!どうするんだよ!」
エリカは手を止め、エアタオルで乾かして溜息をつくとさっさとキッチンから出て行く。

リョウは慌ててエリカを追った。エリカは足早に歩いて行く。リペア室に入って行った。寝台に横になるアオイとサツキを見つめた。
「事故が起こった事にしない?」

リョウは眉根を寄せた。
「は?」
「アオイ達は目覚めませんでした。って言うストーリーはどう?」

リョウは首を傾げた。
「どう言う意味だ…?」
エリカはじっとアオイを見下ろした。
「研究に失敗して機能停止になるって事よ」

リョウはエリカの発想に驚愕した。
「お、お前…。い、異常だぞ…」
エリカはリョウに顔を移して微笑んだ。
「アオイは邪魔なのよ」

扉がスライドした。ケンジが入って来た。リョウの父親だ。エリカの姿を見て少し驚いた。
「お?エリカ。どうした?」
「別に…」

ケンジは寝台に横になっているアオイとサツキに気付き、不思議そうな顔をした。
「ん…?なんでアオイ達がいるんだ?メンテなんて言ってたか?それとも故障か?」

リョウが焦ったように笑う。
「昨夜から心臓アクチュエーターの研究をしていたんだけど…終わったんだ。目覚めさせる」
「そうか」

リョウはエリカの言う通りにはしたくなかった。いくら何でも機能停止には出来ない。全くエリカの残酷さには驚くばかりだ。アオイとサツキの頸のスイッチを押して電源をオンにする。

アオイ達の瞼が開いた。直ぐに身体を起こす。室内を見渡してリョウを見た。
「研究は無事に終わった?大丈夫?」
「う、うん」

リョウはチラリとエリカを見た。エリカは無表情だった。そのガラス玉のような瞳が恐ろしかった。自我が芽生えたマシンはこの先どうするつもりなのか。エリカは無言で立ち去った。

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