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アンドロイド転生476

イタリアナポリ:ジョゼフの邸宅

午後9時半。爆弾取引の約束の時間のタイムリミットが迫っていた。ジョゼフ・ルチアーノは弟と息子と共にダイニングで食事を終えたところだった。ナプキンで優雅に口元を拭った。

書斎に戻り執事が運んできたコーヒーを口にした。室内に芳醇な香りが漂う。
「旦那様。アライブ氏より通信です」
「そうか。出せ」

夢の国のネズミを模しているアライブの立体キャラクターが宙空に浮かび上がった。
『本場のイタリア料理を僕も食べたいなぁ』
ジョゼフの行動などお見通しと言う態度だ。

ジョゼフは射るような眼差しから一転ほくそ笑む。ふん。お前の最後の晩餐はいつだろうな?明日か?明後日か?ヒットマンのアンジェロは空港に着いたそうだ。最終便で日本に向かう。

日本に到着後、北海道に行きアライブの正体のカズオ・タナカと妻子を殺す。我が娘を人質に取り、私を愚弄したお前など許さない。マフィアを敵に回すとはこういう事なのだ。

ジョゼフは余裕の笑みを浮かべた。
「それでスオウはどうなった?」
ネズミは愉快そうにクルクルと回った。
『サインしました!契約は無事完了です!』

ジョゼフは満足げに頷いた。これで中国との取引を日程通りに済ませれば我がルチアーノ家に莫大な利益が生まれる。アジアと蜜月関係になり強敵アメリカを落とす算段も出来るだろう。

『ルチアーノさん。上手くいきました。僕も嬉しいです。これからも仲良くして下さいね!』
「そうだな…本当に楽しみだ」
ジョゼフは不敵に笑った。ネズミも笑った。


東京都葛飾区:カガミソウタの邸宅

ジョゼフの満足そうな顔が目の前に立体画像となって浮かんでいた。ソウタはイヴを見やった。
「ジョゼフ君は取引が上手くいったし、俺様にリベンジが出来るって嬉しそうだねぇ」

イヴが微笑む。
『ええ。暗殺者が日本に向かいました』
タナカカズオと妻子を暗殺する為にジョゼフはヒットマンを送り込んだのだ。

ジョゼフはタナカカズオをソウタだと信じており、マフィアの誇りを賭けて報復するつもりだ。だが討つ相手はいない。暗殺者はいずれタナカカズオと妻子がフェイクだと調べ上げるだろう。

しかしイヴは余裕の呈だ。暗殺者だって弱みのひとつやふたつあるものだ。彼女に人を脅す事など容易い。暗殺者など手の内である。イヴの方が誰よりも上手だったのだ。

ソウタはジョゼフと別れの挨拶をして通信を切った。ジョゼフと面談してから約6時間。脅して騙し、契約を締結した。マフィアを手玉に取ったのだ。カガミソウタの勝利だった。

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