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アンドロイド転生903

(回想)
2118年10月26日 午後
カガミソウタの邸宅
コンピュータルームにて
 
室内にはソウタ、リツ、アリスがいた。そしてホログラムのイヴも宙空に浮いていた。
『ではスオウ氏のAIにアクセスします』
3人は顔を引き締めて頷いた。

イヴはスオウ組のAIにアクセスした。一般家庭ならば連絡は執事へダイレクトなのだが、やはり裏社会の重鎮ともなると包囲網が厚い。イヴはまずAIに執事との取り次ぎを望んだ。

AIはやんわりと拒否する。イヴの常套手段が発揮された。間もなくAIはイヴの妹分になった。妹は執事を呼び出す。執事の立体画像が宙空に浮いた。彼はにこやかに微笑んでいる。

『御用件を承ります』
ソウタも笑った。
「スオウ氏に言ってくれる?ドラッグの件って」
『少々お待ち下さいませ』

さてスオウの反応はどうか。身に覚えはあるのだ。対応するか拒否するか。一同は緊張の面持ちでその時を待った。やがて執事の画像が浮かんだ。残念そうな顔をしている。

『何の事か分からないと仰っています。それでは失礼致します。ご機嫌よう。さようなら』
「待って。待って。少しだけこれを見てくれる?スオウ組のドラッグの顧客データ」

ソウタは唇を舐めた。
「俺はスオウ氏の味方になるよ。ドラッグの取引データの10年間分を全て消去する。そうすれば警察の捜査から逃れられるだろ?」

執事は無言だった。ソウタは続ける。
「まずはこのデータをスオウ氏に見せてよ。これが本物だって分かるよ」
『お待ち下さい』

ジリジリとしながら待つ。暫くすると男性の立体画像が宙に浮いた。スオウではない。側近のトミナガだ。7ヶ月前、タケルがスオウ邸に押し入った時に屋敷に駆けつけた幹部だ。

彼は流れ弾に肩を撃たれて瀕死の状態だった。それでもスオウを守る為に青海埠頭までやって来て意識を失った。それをアオイが救助した。アンドロイドのエイトが病院に搬送したのだ。

トミナガはすっかり回復していた。
『データを確認した。本物だ。目的は何だ?』
さすがにヤクザだ。話が早い。
「契約者の権利を譲って欲しいんだ」

『何の権利だって?』
「アンドロイドのゲンの契約者」
『何のために?』
「復讐したいんだ」

トミナガは眉間に皺を寄せた。
『復讐?何言ってんだ?お前?』
「戦士アンドロイドが逃亡したでしょう?」
『何の事か分からねぇなぁ』

トミナガは笑い出した。さも可笑しそうに。アンドロイドが逃亡しただと?何を言ってる。奴らは全て機能停止になったのだ。クラブ夢幻の乱闘騒ぎで。全てのマシンがバラバラになった。

普段はマシンの管理など舎弟が行っているのだが今回に関しては報告を受けていた。舎弟もトミナガもゲンが逃亡したとは思わなかった。マシン達が破壊されて個体を識別出来なかったのだ。

トミナガは面倒になってきた。
『こっちは忙しい。話などしてる暇などない』
「じゃあ…ドラッグの顧客データを警察に渡すよ。そうすればスオウ組は終わりだね」


※トミナガの登場シーンです


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