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アンドロイド転生368

東京都品川区:スオウトシキの邸宅

タケルは警備員と睨み合った。筋骨隆々の大柄な警備員は右腕を上げると猛烈な速さで振りかぶってきた。その僅かな隙をタケルは見逃さなかった。テイザー銃を放った。

テイザー銃とはスタンガンの強力版で、アンドロイドのCPUを焼く。それは機能停止を引き起こし人間で言うと死に等しい。アンドロイドにとってはピストルよりも脅威なのだ。

ワイヤーが警備員の腹に刺さった。高圧電流が流れるも、彼はガタガタと身体を震わせ、顔を歪めて叫ぶとワイヤーを引きちぎった。タケルは驚愕した。5万ボルトにも屈しないのか。

警備員はタケルに向かって走り出すと一瞬で目の前に躍り出た。その逞しい腕で彼を張り倒した。タケルは勢い良く転がった。警備員は間髪を入れずにタケルの上に跨った。

激しい連打が続く。丸太のような太い腕は凶器だ。タケルは警備員の腕を掴むものの敵わず胸元を続けざまに殴られる。太刀打ち出来ない。ファイトクラブのマシンの強さを思い知る。

仲間のマシンがやって来てタケルに加勢をした。警備員の背に回し蹴りをする。警備員は横倒しになるが直ぐに起き上がり振り返って仲間を睨み、咆哮をあげた。野生の獣のようだ。

警備員の意識が仲間に向いたその瞬間、タケルは敵の胸に渾身の力で頭突きをした。警備員は仰臥する。身体が重い分起き上がるのに手間取った。その隙にタケルは立ち上がった。

仲間のマシンが警備員と格闘する。激しい殴打の音が闇夜に響く。先手を取らなければ。ダメージを与えるのだ。タケルはルークの言葉を思い出す。視覚を奪えと。ルークの得意技だ。

「No.3!警備員を羽交締めにしろ!」
タケルは仲間に命令をする。No.3は警備員の背後に回り込むと首と肩をガッチリと押さえつけた。身体の大きな彼は警備員の動きを封じた。

タケルは警備員の眼前にやって来た。視覚を奪うのだ…!だが躊躇する。アンドロイドとは言え人間と寸分違わないその顔。その目。タケルの息遣いが荒くなり手がブルブルと震えた。

警備員は怒りを露わに咆哮を上げる。まさしく狂気混じりだ。凄まじい勢いで暴れた。No.3の力でも敵わないかもしれない。一刻の猶予もない。奪え!奪うのだ!だが、しかし…!

何を躊躇っている。相手はアンドロイドだぞ?俺は人間を討とうとしているんじゃないか。こんな事にビビっていたらスオウなど倒せるものか。やれ!やるんだ!自分を叱咤する。
 
「ダメです!持ちません!」
No.3が叫んだ。タケルも叫んで警備員の顔面に手をめり込ませた。横面を叩くように空を切った。両方の眼球が弾け飛んだ。

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