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アンドロイド転生392

品川区:スオウトシキの邸宅

タケルは自分の胸を見下ろした。服に穴が開いている。スオウの側近のトミナガに銃で撃たれたのだ。痛みもなければ命の危険もない。つくづく思う。これが人間とマシンの違いなのだと。

しかし自覚としてはダメージはなくとも、穴が空いた状態で放置するのはアンドロイドとは言えど良くないと思われる。これ以上撃たれてはまずいし、早く修理をした方が良いだろう。

つまり手早く邪魔な部下を倒し、速やかにスオウを青海埠頭に拉致をする。妻は巻き込まない。屋敷に残ってもらう。そして息子のマサヤを呼び出して親子共々片付けるのだ。

全てが終わりホームに帰ってキリに修理して貰い、トワの仇を打った祝杯を上げよう。俺は水しか飲めないけどな。あ、待てよ?プランAだのBだのがあるとイヴが言ってたな。

俺に殺人を犯して欲しくないと言って、どうやらスオウに取引を持ちかけるらしい。そのプランA Bの為に何やら動いてるから待てと言う。アオイめ。余計な事を企みやがって。

月明かりの下。トミナガを始め、舎弟達は銃を構え動向を窺っていた。緊迫した空気が張り詰めている。スオウは軽く頷いた。それを合図に部下達がタケルに向かって一斉射撃をした。

タケルはツラツラと考えながらも、油断をしてはいなかった。しなやかに庭を駆け抜けた。弾の嵐など物ともしない速さだ。アンドロイドならではの強靭な筋力と身体能力で回避した。

だが攻撃は最大の防御である。タケルは行動に移した。舎弟の背後に音もなく近付くと頸に手刀する。次々に人間を倒した。殺してはいない。タケルの標的は2人だ。

流れるように澱みなく動き、倒す。人間達は次々と庭に没した。スオウもトミナガも目を見開いた。今起こっている事が信じられなかった。人間に危害を加えるマシンなど初めてだ。

タケルは自分に感動し、喜び、酔っていた。やはり俺は普通のアンドロイドとは違う。人間を討つ事が出来るのだ。だから人と同等…いや、強靭な身体を備えている。それ以上だ。

舎弟らは射撃を続けた。その合間をタケルは風のように近づき倒す。次々と崩れ落ちる。人間達は恐怖に陥った。連携が崩れた。闇雲に撃つ。仲間の流れ弾に当たって倒れる者も多かった。

トミナガは叫んだ。
「やめろ!撃つな!」
だが部下達は興奮して聞こうとはしなかった。トミナガは近くにいた舎弟を殴った。
「やめろ!馬鹿野郎!」

トミナガの目の前にタケルが躍り出た。その素早い動きに驚いて目を剥いた。だが伊達に幹部ではない。すぐに体勢を立て直しトミナガはタケルに向かって銃を向け、撃った。

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