見出し画像

アンドロイド転生447

2119年2月某日 午前3時過ぎ
新宿区:平家カフェ 住居用リビング

リツ達がソラを伴い上階に行くと、父親のキヨシがソファにどっかりと座り腕を組んでいた。ソラを見ると目を細め口元を緩めた。
「おお!よく来たな!ま、座りたまえ」

ソラは微笑んで腰を下ろした。
「はい。有難う御座います」
大人の男の前でも臆する事はなかった。
「ほら。母さん、ケーキを出してやれ」

「はいはい」
マユミはいそいそとキッチンに立った。
「皆んなで食べましょうね。苺でイイ?」
「はい!」

テーブルに苺のショートケーキが置かれた。
「わあ!クリームもスポンジもピンクだ!」
リツが胸を逸らした。
「うちの自慢なんだ!さ、食べろよ」

ソラは両手を合わせた。
「頂きます」
躾の行き届いた少年の姿に大人達は目を細めた。喜んでケーキを食べる姿は好ましかった。

イヴが言うように、ソラは人質だ。だが今この瞬間は親子もソラも幸せだった。ホームとヤクザという事情がないところでは平和なのだ。どうかプランBを発動しませんように。親子は願った。

そう。プランAではイタリアマフィアと中国の蛇頭との爆弾取引の仲介役にスオウ組を立てるという算段だ。スオウが手にする利益は莫大である。それで彼が手を打ってくれれば良いのだ。

プランBはそれでも彼が納得しない時の保険である。息子を誘拐されたと知れば、さすがのスオウも首を縦に振るだろうと踏んでいる。だが心優しい親子は脅迫などしたくはなかった。

マユミはソラの前にカップを置いた。
「はい。ホットミルクもね。ハチミツをちょっとだけ入れてるの。風味が良くなるの」 
「へぇー!」

次いでマユミはチアキとソラの側にいるメグに純水を差し出した。アンドロイドの肌の保湿には1日200mlの水分が欠かせない。これにより肌質が向上し、人間と寸分違わないのだ。

「有難う御座います」
ナニーアンドロイドのメグが丁寧に頭を下げてグラスを手にして水を飲んだ。ソラを愛おしそうに見つめた。ソラの喜びが彼女の幸せなのだ。

チアキがメグに通信をする。
『この後、取引が始まる。スオウトシキの出方次第でソラが必要になるの。時間が来たら知らせるからあなた達は適当に寛いでて』
メグは深く頷いた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?