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アンドロイド転生391

東京都品川区:スオウトシキの邸宅

月夜の庭園。タケルは邸内の警備アンドロイドを全て倒した。戦いが終わると屋敷の主人のスオウが庭にやってきた。悠然とした態度。余裕の口ぶり。流石にヤクザのトップである。

スオウはタケルに顔を向けた。
「さて…お前は何者だ?」
タケルをじっと見つめて彼は笑い出した。
「おい。トミナガ。ヒロトを呼べ」

舎弟がスオウの執事アンドロイドを連れて来た。タケルは彼を見て驚いた。自分と同じ顔だった。ヒロトは動じる事なく澄ましている。その落ち着いた様は執事らしかった。

スオウはタケルを見てまた笑った。
「お前もTEラボか」
タケルは答えなかったが合点がいった。自分が唯一無二の存在ではないことに。

アンドロイドなんて電子デバイスと一緒だ。我々は大量生産なのだ。生まれ変わって18年間。自分と同じモデルを見た事がなかった。だから考えもしなかった。瓜二つのマシンがいるなんて。

ヒロトを見つめて、タケルは何て世界が狭かったのだろうと実感する。スオウはテラスの椅子に腰を下ろして鼻で笑った。
「ふむ。片や執事で片やは夜襲か」

またタケルは答えなかった。スオウは続ける。
「お前らだな?うちから金品を奪ったのは?味を占めてまた来たか。そんな技が出来るのは黒幕に改造されたのか。さぁ、お前の主人を言え」

タケルは不敵に笑った。
「改造されてなどいないし、主人などいない。何でも人間に従うと思ったら大間違いだぞ」
スオウはタケルをギロリと睨んだ。
「随分と大きな口を叩くものだな」

タケルは澄ました。
「今日は金品を奪いに来たんじゃない。ちょっとドライブをしないか?ここだとアンタの奥さんを巻き込むからな。それはしたくないんだ」

視線を感じ、顔を向けるとリビングの窓から女性がこちらを見つめていた。高齢ではあっても美しかった。スオウの妻であろう。腕を組んで不敵な様子だ。怯えてはいない。

ヤクザの妻だけの事はある。気概に溢れている。だが夫の命を奪うと知ったら冷静ではいられないだろう。彼女の前でスオウを討つのは憚れる。だから拉致するのだ。従うだろうか。

スオウはタケルを睨んだ。
「ドライブだと?私を拉致するつもりか?」
だが直ぐにスオウは鼻で笑った。
「お前にそんなことが出来るのか。マシンめ」

どうやら従うつもりはないようだ。そうなると少々手荒になってしまう。漸く生まれ変わった自分の本領発揮が出来るのだ。人間に暴力の振るえないマシンと俺は違う。タケルは不敵に笑った。

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