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アンドロイド転生334

東京都葛飾区:カガミソウタの邸宅

「何者かがソウタを調べています」
隣に座るアンドロイドのスミレが主人であり恋人のカガミソウタに声を掛けた。
「え?マジ?」

ソウタの目の前にはいくつものホログラムが立ち上がり、コンピュータ言語が映し出されていた。ここは「秘密基地」と呼んでいるソウタの城だ。ソウタはホログラムに手を這わせた。

「どんなヤツだ?」
ソウタは楽しそうな顔をした。ハッカーの…いや…そんじょそこらのハッカーと一緒にしないでくれ。天才の俺様を探るなんて生意気だ。

「アクセスしているのはアンドロイド。場所は新宿区歌舞伎町のスオウビル。目的はダークウェブ内の下層エリアを精査して、ソウタの履歴を探っています。どうやら夜の狩についてです」

夜の狩とはアンドロイドの泥棒家業だ。非合法で得た金品を所有している裕福な邸宅を狙う。ソウタは10年程前からバイヤーをしている。相手方のバイヤーのハンドル名はブルーマウンテン。

ソウタがターゲットを探す。ブルーマウンテンに依頼する。そして強奪を終えると連絡が来る。ソウタがその金品をダークウェブで売り捌く。かなりの金が手に入る。相手と山分け。そんな関係だ。

会った事もない。素性も知らない。いや。実はソウタはブルーマウンテンの正体を知っている。優秀なハッカーなのだ。調べるなんて朝飯前だ。ブルーマウンテンは新宿でカフェを経営していた。

平家カフェと言う名のレストラン。そして茨城県白水村のホームと呼ばれる部族と縁戚関係。強奪担当はホームにいるアンドロイド達。まぁ…マシンなら盗みなんて容易いだろう。

ソウタは相手を知っているからと言って何もするつもりはない。この関係が都合が良い。俺様が探す。奴らが盗む。金は山分。ブルーマウンテンとウィンウィンってことなのだ。

それにバイヤーは楽しかった。ネズミと呼んでいる可愛いプログラム達はターゲットを難なく発見する。世の中には非合法な人間は腐るほどいるのだ。だから良心など傷まない。

ダークウェブ内ではアライブというハンドル名。知る人ぞ知る人物なのだ。
「俺様の邪魔するヤツはだぁれだ?」
ソウタはホログラムを見つめ笑った。

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