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アンドロイド転生662

東京都目黒区:エマの住居

エリカの策略で窮地に陥ったエマ。だがタケルはエリカを疑いもしなかった。自分に対するエリカの執着心を甘く見ていたのだ。イヴは全てを承知だが傍観者に徹していた。

イヴはタケルからの協力を拒否した。
『そもそも私の存在意義はホームのために在る事です。タウンの人間には関与しません。恋人の事はあなたが解決して下さい』

タケルは頷く。そうだ。イヴにとってホームが全て。それ以外は範疇にない。じゃあ…どうすれば良いだろう。では…リョウに頼んでみるか。コンピュータに精通している彼なら容易いかもしれない。

イヴは話を変えた。
『あなたはホームに帰らないのですか』
タケルは信念を持っていた。
「ああ。暫くエマの側にいる』

イヴは微笑む。
『アオイはモネの側に残りました。アリスとチアキはリツと共に新宿に行きました。アンドロイド達の在り方が変わって来ましたね』

「そうだな。ミオは大人になった。エリカは纏め役になった。村では議論する。変わったな」
『ええ。ではご無事に過ごして下さい』
イヴのホログラムが消えた。

タケルは眠るエマを見つめた。頬に掛かっている髪をそっと退けた。何とか力になりたかった。よし。リョウに連絡を取ってみよう。深夜2時だが夜更かしの彼は起きているだろう。


茨城県白水村:エリカの部屋

「え⁈タケルは帰って来ないの⁈」
エリカは目を見開いてイヴに問うた。
『はい。恋人が窮地に陥ったので暫く側にいる事にしたのです』

エリカは憎々しげに顔を歪めた。エマを陥れたまでは良かったが、まさかタケルが帰って来ないとは…!あんなに性に奔放で穢れた女なんて見限ると思っていたのにと悔しがる。

イヴは呆れたように溜息をついた。
『あなたの画策にエマは傷ついたようですよ』
イヴは何もかも知っているのだ。エリカがリョウを操り、エマを追い詰めた事を。

「タケルにチクったの?」
『いいえ』
「イヴ。イイ感じじゃん。私の味方?」
『私は傍観者です』

エリカは虚空を睨んだ。
「タケルにあんな不潔な女は相応しくない。私はタケルの為なら何でもする」
『そうですか?自分の為ではないのですか?』

エリカは鼻息を荒くした。
「どっちだってイイよ!これから最後の追い込みをする。エマは友情も失うの」
ヒカリのゴーストをエマが暴く事にするのだ。

イヴは顔を顰めた。
『おやめなさい。もう充分です』
「放っておいて」
エリカは通信を切るとリョウの元へと向かった。

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