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アンドロイド転生998

2119年10月5日
ロンドンにて

「どうせ美術館とかは行くでしょう?」
ミアの言葉にルイとレナは頷いた。
「だからね?遊園地に行こうと思うの」
若い2人は目を輝かせた。

リョウは引き攣っている。ミアの提案に賛成したものの本当は恐ろしくて堪らないのだ。
「リョウ。克服するって言ったよねー?」
ミアの笑顔にリョウは逆らえない。

レナは大張り切りだった。ルイの親戚に会えたのだ。自分を認められたのだと思うと嬉しくて堪らなかった。レナは先陣を切った。
「行こう!早く行こう!」

・・・

絶叫マシーンを降りるとリョウとルイの脚がよろけた。平衡感覚が失われているようだ。2人共青い顔をしている。ベンチに座り溜息をつく。汗が止まらずタオルで拭う。

ルイは呟く。
「信じらんねぇ…」
リョウはチラリとルイを見た。
「だろ?人間の乗り物じゃねぇだろ?」

ミアとレナは瞳が輝いていた。
「ミアさん!もう一度いこう!」
リョウはやれやれと頭を振る。
「女達は化け物だ…そうだよな?」

女2人が意気揚々と歩いて行くのを男2人は見送った。ルイは絶叫マシーンを見つめた。
「俺さ…遊園地って初めてなんだ。来るまではめちゃくちゃ楽しみだった」

「分かる。俺もそうだった」
「ミアさんもレナも最高だって言うから乗ったけど、死ぬかと思った。もうムリ。兄ちゃんはあれに3回も付き合ったんだって?ありえない…」

そう。昨年、ミアに連れられて初めて遊園地にやって来た。喜んでいるミアを断れず3回も連続して乗ってしまった。汗が噴き出て吐き気がしたものだ。克服すると誓ったがやはり無理だった。

暫くすると元気いっぱいのミアとレナが戻ってきた。次にお化け屋敷に行こうとなった。屋敷内では女達の絶叫にリョウ達は耳が痛くなった。
「リョウは何で怖くないの⁈」

「あんなのホログラムだ。しかも驚かせる法則がある。前もって分かるじゃんか。でもどうやって恐怖を煽らせるか関心がある。お化け屋敷とは人間の心理をつくんだな。興味深いな」

ルイも頷いた。論理的な思考の彼ららしかった。
「何言ってんの?意味不明!」
どうやら男女は遊園地の楽しみ方が違うようだが最終的に4人は満足だった。

夜になり遊園地から出るとミアが微笑んだ。
「ルイ。レナ。うちに来て。会いたいって」
「え!良いんですか?」
「勿論!是非!」

・・・

ミアの家族の歓迎を受けてイギリスの家庭料理を堪能したルイとレナ。日本人の父親とイギリス人の母親。そして大学生の弟。穏やかで明るい人達。楽しい時間。有意義なひと時だった。

リョウを絶賛してくれて嬉しくなる。ミアだけがリョウを好いているのではなく家族にも受け入れられているのだ。両親にもホームの親戚にも見せたかった。誰よりもリョウの親達に。

お開きの時間となりルイは席を立った。
「リョウ兄さんがお世話になっています。世間知らずな人ですけど…悪い人間じゃないです。ミアさんを悲しませたりしません。絶対です」

ルイは丁寧に頭を下げた。
「兄をこれからも宜しくお願い致します」
ミアも家族も笑顔だ。笑っていないのはただ1人。リョウだった。ルイの言葉に驚いていた。

間もなくタクシーがやって来てルイ達が乗り込むと全員が見送った。リョウは頭を下げた。
「ルイ。大人になったな。有難う」
そう。ルイも成長したのだ。


※リョウとミアの遊園地のシーンです


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