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アンドロイド転生430

新宿歌舞伎町:クラブ夢幻

ルークは逃亡したゲンを追って外に出たが見失い、やむ得ず店内に戻った。ルークの前に仲間のNo.8がやって来た。静かな双眸。軽い微笑み。
「倒したか?」

No.8は頷いた。
「はい」
「よし」
戦いの宴は漸く終焉を迎えたのだ。

自分を含めた7体のうち4体が犠牲になった。生き残ったのはルーク、ミオ、No.8だ。マサヤのマシンは全て倒した。敵味方と共に機能停止になった身体が転がっていた。まさしく死闘だった。

ルークは店内を見渡した。マシンだけではなく人間達も多くが犠牲になっていた。好奇心が身を滅ぼしたのだ。しかしあまりの数に驚くほどだ。これは社会問題になるだろう。

そう言えばこれだけの騒ぎになったのに警察が来ないのはどうしてか?ルークは頭を捻った。実は数名が通報したものの、警察は取り合わなかった。危機管理能力の低い組織なのだ。

ルークは床に横たわったミオに近付き、しゃがみ込んだ。酷い姿に顔を顰めた。ミオの顔面は陥没し赤い油が溢れて流れていた。拳は潰され、腹にはワインボトルが刺さっている。

ミオはルークを見つめた。
「ゲンって…マシンが逃げたの…いた?」
ミオの声は聞き取りづらかった。よく見ると首が千切れそうだ。声帯が潰されたのだろう。

ルークは首を横に振った。
「いや。いなかった」
「こ、怖かったよ…あのね」
ミオの声が枯れた。機械音が混じった。

ミオは通信で話す事にした。
『ゲンが私にウィルスを仕込んだの。メモリにファイルがある。開いてない。大丈夫かな?』
「キリ達にデリートして貰おう」

ルークはミオの陥没した頬を撫でた。
「それよりも酷い有様だな…大丈夫か」
ミオは力なく微笑む。
『うん。相手は強かったなぁ。怖かったよ』

ルークは何度も頷いた。
「よく頑張ったな。偉いぞ」
ミオの瞳から涙が溢れた。
『うん…うん』

ミオはレイラとの死闘を思い出した。ファイトクラブ仕様のマシンの強さには本当に驚いた。戦いはもうこりごりだ。勝利するとは何て幸運だったのだろうか。天がミオに味方をしたのだ。

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